子宮がんには、「子宮体がん」と「子宮頸がん」の2つがある。子宮体がんは上図の通り、子宮の奥、胎児が育つ子宮体部にできるがんだ。もう一方の子宮頸がんは子宮の入り口にできるがんで、子宮頸がんは、女性のがんの中では乳がんの次に発症率が一番高く、特に20代～30代の若い世代において近年は乳がんよりも発症率が高く、年々増加傾向にある(下図参照)。世界では年間約50万人の人が発症し、約27万人が亡くなっている。日本においては年間約1万5千人が発症し、約3,500人が亡くなっている。あまり知られていないが、日本では1日約10人が子宮頸がんで亡くなっている推計になる。

実は子宮頸がんの原因は、ほぼ100パーセントの割合でヒトパピローマウイルス(HPV)の感染であることが解明されており、その感染ルートが性交渉であると考えられている。口や手の皮膚、粘膜などの接触によっても感染するため、コンドームの使用で100％感染予防することが難しく、女性の80％が一生のうちに一度はHPVに感染しているといわれている。

先ほど、子宮頸がんはHPV感染によって発症すると述べたが、感染したすべての人が子宮頸がん発症に移行するわけではない。下図の通り、発がん性HPVに感染しても多くの場合は免疫で排除される。しかし、一部のウイルスが排除されずに感染が続き、子宮頸部で細胞の変化(異形成)が起こり、前がん状態となるが、がんに進まずに自然治癒する場合が多い。が、ごく一部はがんに進行して子宮頸がんになってしまう。

前がん状態、および子宮頸がんの初期は無症状のことが多く、不正出血や性交時出血など身体の異変に気付いた時はかなり進行していて、子宮の全摘出が必要になってくるケースが多い。さらに、他の臓器に転移していた場合には命にも関わってくる。
このHPVの中でも、子宮頸がんから検出される割合が高い16型と18型の感染を予防するワクチンが開発され、海外では2006年から接種が開始されていたが、日本では2009年10月にグラクソ・スミスクライン社の子宮頸がん予防ワクチン「サーバリックス」が正式認可され、12月22日に発売された。
この画期的なワクチンについて、グラクソ・スミスクライン社に伺った。

◎サーバリックスの特徴
接種回数：半年間に3回筋肉注射による接種(初回、一ヶ月後、6ヶ月後)
接種可能年齢：10歳以上の女性
予防効果：HPV16型と18型の感染と発症をほぼ100％予防
　　　　　接種後6.4年の予防効果を臨床試験で確認。数学的に予測すると20年以上は
　　　　　抗体が持続されると推計される
主な副反応：注射部位の疼痛、発赤および腫張、胃腸症状、筋痛、関節痛、頭痛、疲労
打てない人：熱、重篤な疾患がある人、成分過敏、その他医師の判断による

現在、海外の100カ国以上で子宮頸がんワクチンが承認されていて、性交をする前の10代前半に公的補助をして接種を推奨している国が多い。日本の日本産科婦人科学会、日本婦人科腫瘍学会、日本小児科学会でも、11～14歳の女児を中心に45歳くらいまでの女性に対し、このワクチン接種を推奨しているとのこと。
性交経験をする前に接種しておくのが一番安心だが、性交経験がある人、過去に子宮頸がんの前がん状態になり自然治癒した人にも、次の感染を予防する意味で接種は有効なため、未婚・既婚を問わず幅広い年代の人に受けてもらいたいワクチンだ。
接種の前には、HPV検査は必須ではなく、問診票への記入と医師の判断により接種できる。

ただし接種したからといって、定期的に子宮頸がん検査を受診しなくても良いということではない。子宮頸がん検診は継続して受診する必要がある。何故ならこのワクチンはHPV16型と18型を対象にしており、子宮頸がんの原因となるウイルスの大部分をカバーできるが、発がん性HPVには他の型もあるからだ。

接種できる医療機関は、当サイトに情報を掲載している四谷メディカルキューブで毎月第3金曜日の午後に行われている子宮頸部専門外来＜担当医・今野良先生(自治医科大学附属さいたま医療センター産婦人科教授)＞のほか、12月22日以降、グラクソ・スミスクライン社が運営する、子宮頸がん情報サイト(allwomen.jp)で、接種できる医療機関のリストを掲載している。価格や接種可能日については各医療機関にお問い合わせを。

日本では、中年以降ならまだしも、20代、30代の女性が子宮頸がん検診を積極的に受けているという話は聞かないが、なんと海外の先進国では子宮頸がん検診を受けるのは成人女性の常識で、受診率は80％以上、ほとんどの人々が若いうちから受診しているという。今回取材して20～39歳の子宮頸がん発症率が高いこと、そして日本では1日に約10人が子宮頸がんで亡くなっていることを初めて知った。現在日本では新型インフルエンザが話題になっているが、インフルエンザと同様に、より多くの女性が子宮頸がん予防に注目して欲しいと願う。

子宮頸がんと、子宮頸がんワクチンについての詳しい情報はこちら
allwomen.jp

画像・資料提供：グラクソ・スミスクライン株式会社
取材協力：グラクソ・スミスクライン株式会社、四谷メディカルキューブ、セコム医療システム株式会社

(AAN WEB編集部　松本理恵)