アンチエイジングニュース

ドクターズリレー通信

ドクター自身の健康法や、その知識や経験から美容や健康について意見をうかがうコーナー「ドクターズリレー通信」。
第6回目は、発毛治療のエキスパートである脇坂クリニック大阪の院長を務める脇坂長興先生に、興味深いお話をうかがってきた。

アンチエイジングネットワークが実施しているアンチエイジング意識調査の中で「加齢に伴い見た目と中身どちらが気になりますか」という質問をした。この問いに対し、例年男女関係なしに「見た目」を選択する人が半数以上となっている。

さらに「見た目」の問題に関連付けて、体の部位でどこが気になるか、という問いに関して、これもまた例年通り、男性は圧倒的多数の方が「髪の毛」を選択している。

さて髪に悩む人の多くは、どうしても「抜け毛」に過敏になりがちだ。
しかし専門家の話を聞くうちに、「抜け毛」のみに注目すべきではない、ということが分かった。

■頭髪専門外来の医師にインタビュー
今回アンチエイジングネットワーク事務局では、毎月3500人以上の髪に悩む方が受診する頭髪専門外来を開設する、脇坂クリニック大阪の脇坂医師にインタビューを実施。それによると、見逃してはならない”本当の”薄毛のサインは「抜け毛」ではなく、「髪の細さ」だという。

男性に看られる最も多い脱毛症である「AGA(男性型脱毛症)」。一般的には思春期以降、額の生え際や頭頂部のどちらか一方、または双方から薄くなり進行するのが特徴だ。その初期症状として、髪が細く、短く、柔らかくなる”毛髪のミニチュア化“が見られるという。「”毛髪のミニチュア化”とは、毛髪が十分に成長しきれないまま発育を停止して、その結果毛髪が太くなることができず、細く短い髪になってしまうことを言います。」と脇坂医師は説明してくれた。

AGAだと、抜けてしまう前に、髪は十分太くなることなく成長を止めてしまっているということ。言い換えれば、細くなっている状態を見つけることができれば、抜け毛が発生する前でも、AGAのサインとして受け取れるというわけだ。

なお「日本人の髪の太さは通常0.07~0.10mm。女性は30歳過ぎ、男性は20歳過ぎに髪の太さのピークを迎え、それ以降は年齢とともに細くなってしまいます」とのこと。またAGAの症状でなくても、加齢、偏った食事、不摂生な生活習慣によっても髪の毛が細くなることはありうる。

■髪が細くなることは避けられないのか
脇坂医師は「毛髪の一生は、『成長期』と『退行期(生産力が衰える時期約2週間)』と『休止期(活動を休止する時期約3か月間)』を繰り返します。このサイクルのことを『ヘアサイクル(毛周期)』と呼びますが、AGAの人はこのヘアサイクルが正常に機能しなくなります。」と指摘する。じっくりと成長する成長期が通常2~7年のところ、数か月~1年以下になってしまい、毛髪が太く成長せず、細いまま抜け落ちてしまうというのがAGAのメカニズムなのだ。

だが、ここで光明がある。脇坂医師によれば、「毛髪は『キューティクル(毛髪の表面)』『コルテックス(毛髪内部)』『メデュラ(髪の芯)』と呼ばれる3層に分けられます。
特にコルテックス部分は水分を吸収しやすく、水分だけでも最大30%も膨潤することが知られています。」とのことで、髪を保湿すれば”髪の見た目の太さのケア”は可能だ。

毛が細くなると、全体のボリュームが減り薄く見えてしまい「髪が薄くなった」ように感じ、それによるストレスが、薄毛に拍車をかけてしまうことも考えられる。メンタルケアが、ヘアケアの重要な要素であることは言うまでもないが、髪の「本数」だけではなく「細さ」をケアするという視点を、これからは意識すると良いだろう。

取材協力:医療法人  脇坂クリニック大阪

脇坂 長興(わきさか・ながおき)

経歴
1989年 3月 聖マリアンナ医科大学医学部卒
1989年 5月 聖マリアンナ医科大学病院(形成外科)
1990年 2月 聖マリアンナ医科大学 横浜市西部病院(麻酔科)
1995年 4月 聖マリアンナ医科大学助手(形成外科)
1996年 6月 浜松聖隷病院(形成外科)
1998年 4月 聖マリアンナ医科大学講師(形成外科)
2000年10月 脇坂ナカツクリニック開院
2011年 6月 脇坂ナカツクリニックを梅田に移転
        脇坂クリニック大阪に名称を変更

主な所属
日本形成外科学会専門医
麻酔科標榜医
日本美容医療協会会員
特定非営利活動法人F.M.L.理事
医療法人 翠奏会理事長

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