「アンチエイジング」とは一体何でしょうか?
アンチエイジングが目指すもの、アンチエイジングに取り組む具体的方法など、一般の方々のアンチエイジングに役立つ情報ご紹介します。
「アンチエイジング」とは?
「アンチエイジング」とは、いったい何のことでしょうか?
- アンチエイジングは、日本語で言えば「抗老化」「抗加齢」。
しかし私たちが考えるアンチエイジングは「不老不死」や「不自然な若返り」を目指すことではありません。人生の時計を少しだけ戻して、進みを遅らせる。
急激に落ちていく体のエイジング曲線の角度を少しでもゆるくしていこうというものです。
アンチエイジングが目指すのは、人生の質を高めること。
- アンチエイジングは「健康長寿」を実現し、生涯に渡って老いと上手に付き合っていき、Q.O.L.(クオリティオブライフ = 人生の質)を向上させることが必要だと考えます。
老化を遅らせることで、病気を防ぎ、介護なしでの生活を保ち、社会とかかわって自分の居場所をもつこと。
これがアンチエイジングが目指すものだと考えます。
老化の定義
- 「老化」とはいったいどのような考え方なのでしょう。
人間には2つの年齢があると考えます。
実際の年齢である「暦年齢」と、現在の心身の状態を表す年齢「生物学的年齢(リアルエイジ)」です。
「暦年齢」はだれもが同じペースで進んでいきますが、「生物学的年齢」は自分の努力次第で進みを遅らせることができるのです。
「生物学的年齢(リアルエイジ)」を若く保ち、健康を維持し、少しだけ時計の針を戻すことがアンチエイジングの考え方の基盤となっています。
アンチエイジング医学
- 「アンチエイジング医学」は、医学の中ではまだまだ新しい分野です。
これまでの医学のように臓器別に細分化して対処するのではなく、トータルで人を健康にする医療といえます。
見た目だけでなく、身体の機能全体を若く保つ、健康長寿のために何ができるかを総合的に考える予防医学です。
老化原因のメカニズム
「老化」を防ぐためには、原因を知ることが必要です。
では、老化の原因は具体的には何でしょうか?
様々な要因が複雑に絡み合っていると考えられ、まだ定説はありません。現在考えられている主なものをいくつかご紹介します。
細胞の寿命(細胞時計説)
- 人間の体を構成する細胞は分裂を繰り返しています。
遺伝情報を担っている染色体の末端にテロメアと呼ばれる部位があり、細胞分裂の際、遺伝情報を正しくコピーして受け渡す働きをします。しかし、テロメアは分裂するたびに短くなっていき、ある程度まで短くなると分裂をやめて自壊します。
細胞分裂ができなくなり、これが老化のサインとなってきます。
DNAの損傷
- 生命の設計図であるDNAは体内外の刺激を受けて損傷していきます。
修復される前に劣化したDNAがコピーされていき、老化につながるという考え方です。
機能の老化(ホルモンの低下、免疫機能の低下)
- 体内にある様々なホルモンは年齢と共に分泌量が低下します。
代表的なものとして代謝のコントロールに関係する「成長ホルモン」、睡眠に関係する「メラトニン」、男女それぞれの生殖に関係する「性ホルモン」などが挙げられます。これらの減少により老化が起こるという説です。女性の更年期についての詳細はこちら
男性の更年期についての詳細はこちらまた、「免疫機能の低下」もあります。
免疫は細菌やウイルスなどから体を守る自己防衛システムで、免疫機能が低下することで、様々な病気を引き起こす可能性があります。
老廃物の蓄積(活性酸素、AGE)
- 酸素が体内に取り込まれ消費されるとき、一部が活性化され「活性酸素」となります。
一定量増えると細胞に攻撃を加え、細胞を酸化させます。酸化とはいわゆる「サビ」のことです。サビついた細胞が正常な働きができなくなると、老化が進行してしまいます。
また細胞の酸化はDNA損傷の原因にもなり得ます。
主な原因は毎日の生活習慣ともいえます。紫外線に当たること、ストレス、喫煙や大気汚染の環境、また脂質の多い食事や、添加物の多い食生活も活性酸素を発生しやすくする原因となるのです。また最近では老化の原因の一つとして「糖化」が注目を集めています。
糖にはタンパク質とくっつく性質があり、これを「糖化現象」と呼びますが、この糖化の最終段階の物質が「終末糖化産物(Advanced Glycation End-products)」と呼ばれるもので、この頭文字をとってAGE、つまり「糖化」として問題視されています。
とくにAGEは高血糖値、高脂血症、高血圧など、つまりメタボの三大要素すべてに関係があり、糖分のメタボリズムとそのコントロールはこれからの重大課題です。
バランスよく歳を取るために
筋力が衰える、高血圧になる、体脂肪が増える。
どこか一部でも老化が進むと、全身の老化が早く進んでしまいます。
血管、骨、筋力、体脂肪、ホルモンバランス、脳神経など、特定の部位だけ老化が進まないように気をつけるのではなく、どれもバランスよく歳を重ねると、老化のスピードを遅らせることができます。
そのためにも、定期的に検診を行って、健康管理することが重要です。
年に一度「定期検診」を受ける方も多いと思いますが、現在の身体の「老化度」を調べ、これからの老化を促進する因子を示す「老化危険因子」も調べることができるのが「アンチエイジングドック」です。
老化が原因で起こる疾患や体調不良の予防を目指します。
アンチエイジングドックについての詳細はこちら
からだのチェックを行っていますか?「みんなの検診白書」
アンチエイジングのためにはライフスタイルが重要
様々なアンチエイジングのアプローチを見ていくと、「この食材を食べれば」「この運動をすれば」「このサプリを飲めば」という決定的なものはありません。
アンチエイジングの基本は、何か特別なことを行うのではなく、体に良いことを少しずつ積み重ねていくライフスタイルが重要。
日々の「バランスの良い食事」「適度な運動」「良質な睡眠」が基本です。
プラスアルファでアンチエイジング医学の知恵やサプリメント等をとりいれればよいのです。
そして生きがいを持ち、社会と関わりながら内面も充実させて生きていくことが重要です。
アンチエイジングのための食
バランスの良い食事
- 健康の維持、老化の防止には、食生活が基本になります。
食生活でもっとも重要なことは、バランスのよい食事をすることです。
テレビ、雑誌、インターネットには「○○はカラダにいい」「若返りには○○だ」という情報が溢れていますが、その食品ばかりを食べていては健康を維持することはできません。
逆に、動物性脂肪は体に良くないからと、肉類を一切口にしないと、栄養バランスの偏りを招いてしまいます。
私たちの体は、必要な栄養素がバランスよく保たれることで初めて健康に保たれますので、様々な食材を1日20から30品目を目標に、しっかり食事をしましょう。
食生活の基本の詳細はこちら
よく噛んで食べる
- 時間をかけてよく噛んで食べましょう。よく噛まずに食べると、脳から満腹サインが出される前に必要以上の量を食べてしまい、肥満につながる可能性があります。よく噛んで食べると、適切に満腹感をもたらし、食べ過ぎを防ぐことができます。食べ物も美味しく感じられ満足感が高まりますし、口の周りの血行も促進され、脳への血流が増します。
食べすぎない
- 食事量にも気をつけましょう。
通常は腹八分目、高齢者は腹七分目程度が望ましいです。
体型維持につながるだけでなく、動物実験ではエサを3割カットすると寿命が3割のびたという結果が得られています。
また、摂取カロリーを制限すると記憶力の向上にも有効という研究結果も出ています。
しかし、量は減っても、質を大きく変えてはいけません。
さっぱりしたものや食べたいものだけ食べると栄養状態が悪くなり、老化が進むので、低栄養にならないように気をつけましょう。
動物性たんぱく質や脂分もある程度は取る必要があります。
- 食事をすると血糖に反応して、膵臓からインシュリンというホルモンが分泌されます。 インシュリンの過剰な分泌は脂肪細胞の脂肪分が増えて、肥満に繋がる恐れがあります。
野菜やきのこ、海藻類など食物繊維を含む食品は、糖の吸収が遅くなります。 まずこれらをとってから肉やご飯を食べると、血糖値の上昇がゆるやかな食材をまず最初に食べます。
食べる順番を工夫すると同じ食材をとっても血糖値の急激な上昇が防げます。
外食で丼ものなど炭水化物が多い食事をとる時は、野菜も一緒に頼み先に食べましょう。
野菜から食べる
錆びないカラダのための食事
- 老化の大敵である活性酸素。活性酸素を消去するための食べ物積極的にとりましょう。
具体的には以下の方法があります。- 体の中に本来ある抗酸化物質を活性化させる
(マンガン、鉄、銅、亜鉛、セレン、ビタミンB2、ビタミンB12などのミネラル、ビタミン類をとる) - 抗酸化物質を直接食べ物としてとる
(ポリフェノール、カロテノイド、含硫化物などのフィトケミカルをとる。簡単な方法はいろいろな色の野菜や果物を食べること。)
- 体の中に本来ある抗酸化物質を活性化させる
アンチエイジングのための睡眠
ダメージからの回復には睡眠が重要
- 眠ることは身体や脳を休め、心身のダメージを回復させます。
もし、十分な睡眠がとれない場合、脳細胞がダメージから回復しないまま、ストレスによる次のダメージを受ける可能性があります。
質のよい睡眠のためのポイント
成長ホルモンの分泌を促す
- 新陳代謝を促し老化を防ぐ「成長ホルモン」は、アンチエイジングのために欠かせません。
成長ホルモンは入眠直後の深い睡眠時に一番多く分泌されます。
夜更かしをしたり、遅くまでスマートフォンやパソコンの画面を見たり、睡眠サイクルを狂わせるような生活パターンを改善し、朝は太陽の光を浴び、夜は早めに布団に入る習慣をつける必要があります。
アンチエイジングのための運動
なぜ運動が必要か
- 運動により、筋肉量が増えて基礎代謝が上がり、心肺機能も向上します。
脳の活性化や血流量のアップにもつながります。
その他にも、骨を丈夫にして骨粗しょう症の予防になります。
続けることが重要
- 心臓や血管に負担をかけずに心肺機能を高めて脂肪を燃焼させる有酸素運動を継続することが重要です。
有酸素運動とは酸素を体に取り込みながら行う運動で、代表的なものはウォーキングがあります。
有酸素運動の継続で、中性脂肪を減少させることができます。高脂血症、高血圧、糖尿病の予防にも効果があります。
通勤時にひと駅手前でおりて歩く、朝晩散歩をするなど日常生活の中に組み込み、継続することが重要です。
継続的な運動は、筋力量の維持にもつながります。
無理した運動を三日坊主で終わらせるより、1日少しずつ続けて行くことがアンチエイジングのためには大切です。
運動の基本はこちら
アンチエイジングのためのメンタル
「必要とされる」がキーワード
- 体が健康だけでは、幸せな人生を送ることができません。
仕事をリタイヤしてして、社会から切り離され生きがいを失ってしまうと、心の元気をなくしてしまいます。
誰かの役に立つこと、社会とつながり人とかかわりを持つことが重要です。
仕事をリタイアしたから、と諦めるのではなく、ボランティアでもスポーツでも積極的に取り組んで、社会と関わりを持ちましょう。
「あれはダメ、これはダメ」に縛られない
- 「これが健康に悪い」「これは食べてはいけない」
ダメなことばかりに縛られるとストレスがたまり、イキイキと生きることができません。
嫌なことを我慢してやるのではなく、やりたいことを積極的に取り組みましょう。
心のアンチエイジングのために
- その他にも以下のようなことを心がけましょう
- ●色々なことに興味を持つ
- ●バランス感覚を持つ
- ●リラックスする
- ●旅をする
「見た目のアンチエイジング」が重要?
見た目が若いと長生き?
- 同じ双子でも、見た目が若々しい方が身体機能や認知能力も高く長生きした、というデンマークでの調査があります。
肌や髪の毛などの外見も体の一部分ですから、体が健康で若ければ、容姿が若々しいのも当然と言えるでしょう。
生物学的年齢(現在の心身の状態を表す年齢)の指標として、将来的に「見た目」を基準とすることもできるかもしれません。
それに、年齢より若く見られることは自信にもつながりますが、老けて見られるとコンプレックスになってしまいます。
見た目の若々しさを保つのも、アンチエイジングのためには重要なのです。
3年連続70%の人が「見た目」と回答
- 過去にアンチエイジングネットワークで行ったアンケート調査で、「加齢に伴い、見た目と中身どちらが気になりますか?」という質問を行ったところ、3年連続70%の人が「見た目」と回答しました。
このように見た目のアンチエイジングへの関心は非常に高いのです。 では、外見を必要以上に老けて見せてみせないようにはどのような対策をしていけばよいでしょうか。
肌のアンチエイジング
肌を老化させる原因
- 肌を老化させる原因は、以下の4つです。
- ●紫外線(光老化)
- ●細胞の酸化
- ●皮膚の乾燥
- ●皮膚の菲薄化
- その中でも、もっとも悪影響を及ぼすのが「紫外線」であり、もっとも簡単に防げるのも紫外線です。
肌のアンチエイジングのためには、できるだけ日焼けしないことが重要です。
そのためには、日焼け止め(サンスクリーン剤)を日常的に正しく使用することが大切です。
UVBとUVA両方に、できれば近赤外線(NIR)にも有効なもので、SPFは15以上、PAは+以上のものを使うようにしましょう。
少し厚塗りになるようにしっかりと塗り、汗や皮脂で落ちたら、マメに塗り直しをすることが必要です。紫外線によるダメージ(光老化)の詳細はこちら
その他の肌老化の原因の詳細はこちら
髪のアンチエイジング
髪を老化させる原因
- 髪の毛のツヤやボリュームは外見を大きく左右します。
たとえ健康でも、髪の毛が薄いと老けて見られます。
年齢とともに髪も細くなり、コシも弱くなっていくため、髪のボリュームが無くなりますし、加齢に伴うホルモンバランスが崩れも薄毛に影響してきます。
髪の老化対策
- では、どのような対策が有効なのでしょうか。
髪は毛細血管から栄養を取り込み、この栄養を元に細胞分裂して伸びていきます。
髪も体の一部であり、頭髪の状態は体の状態を示しています。
つまり、身体に良いことは髪にも良いといえるでしょう。 - 栄養バランスの悪い状態を続けることや過度のダイエットも髪の太さや成長スピードに影響してきます。
さらに精神的、身体的ストレスも自律神経のバランスを崩し、血行や栄養状態が悪くなり、髪に悪影響を及ぼします。 - 睡眠不足も、頭皮の血行不良を起こす原因となりますし、夜にもっとも成長すると言われていますので、十分な睡眠は重要です。
「バランスのよい食事」「良質な睡眠」「適度な運動」を実践し、ストレスフリーな生活を送ることが、髪にとっても良い影響があるといえます。 - また、頭皮のマッサージは血行が促進され、髪に良い効果があります。
ゆっくり地肌を温めて毛穴を開いた後に、シャンプーを行うと、洗浄効果が高まり、汚れから髪を守る効果があります。
また、医療による予防や治療もあります。 - ヘアケアの詳細はこちら
監修:塩谷信幸
【プロフィール】
・北里大学名誉教授
・特定非営利活動法人 アンチエイジングネットワーク 理事長
・医療法人社団ウェルエイジング 名誉院長
【著書】
「お若いですね」と言わせよう。(ゴルフダイジェスト社) 他多数