老化の原因を知る
老化原因のメカニズム
「老化」がいったいどのようなメカニズムで起きるのか。遺伝か?DNAの損傷か?現在考えられている様々な仮説をご紹介します。
目次
細胞の老化:細胞時計説/体内時計説/遺伝子プログラム説
細胞の寿命。キーワードは「テロメア」
- 人間の体を構成する細胞に寿命があるという考え方です。
- 人間の体には遺伝情報を担っている「染色体」と呼ばれる物質があります。その末端に帽子のような特殊な格好をした「テロメア」と呼ばれる部位がついています。
- 「テロメア」の役割は、細胞分裂したときに、遺伝情報を正しくコピーして受け渡す働きをしているのですが、分裂するたびにすり減るように短くなっていきます。永遠に分裂し続けるわけではなく、ある程度まで短くなると分裂をやめて自壊します。テロメアはこのすり減って短くなる性質により「細胞寿命の時計」と呼ばれることもあります。
- 長さや分裂回数には個人差があり、自身が本来持っている体質や、その人が置かれる生活環境によって変化するとも言われています。
- また、一般的に大人よりも子どもの方がテロメアが長く、歳を重ねるごとに短くなっていきます。細胞分裂ができなくなれば細胞は入れ替わることができず、人体の活性は失われていき、臓器や細胞が障害を起こし、健康寿命を短くしてしまいます。
細胞の老化:DNA損傷説
分裂するたびに損傷を受けるDNA
- 生命の設計図であるDNAが活性酸素や紫外線などの刺激により損傷し、修復される前に細胞分裂してしまった場合、劣化したまま間違った情報が受け継がれてしまいます。 細胞分裂は生命活動を続ける限り繰り返し行われるため、これまで発生した損傷・劣化した情報が蓄積された結果、老化につながるといわれています。
- また、DNAは以下で解説する活性酸素によっても損傷を受けます。
機能の老化:内分泌説(ホルモンバランスの崩れ)
体内に存在する様々なホルモンの低下
- 「ホルモン」とは、特定の組織や器官から分泌され、体液と共に体液を循環し、特定の組織に変化を与える物質のことです。私たちの身体の中には様々な種類のホルモンが存在し、無意識に私たちの体内機能を調節してくれています。
- その中でも年齢と比例して分泌量が低下するホルモンが存在します。その代表的なものとして代謝のコントロールに関係する「成長ホルモン」、睡眠に関係する「メラトニン」、男女それぞれの生殖に関係する「性ホルモン」などが挙げられます。 実際、「加齢」と「ホルモン分泌の低下」の因果関係についてはまだ定かではありませんが、ホルモン分泌の低下が身体に何らかの影響を与えるということは確かです。
- 加齢とともに低下していく代表的なものが「成長ホルモン」です。 10代に最も分泌が多くなり成長期に骨や筋肉の成長に深く関わるホルモンで、20歳を過ぎると細胞の再生や修復に作用します。分泌量は加齢とともに減少し、分泌量が減ると記憶力の低下、脂肪分解能力や免疫力の低下につながります。適度な運動や適切な睡眠で補うことができます。
- 睡眠に関するホルモン「メラトニン」は、分泌量が減ると睡眠障害が起こったり、免疫力が低下します。
- 「男性ホルモン」「女性ホルモン」などの「性ホルモン」の分泌量が低下すると、自律神経の働きが乱れ、のぼせやほてり、動悸、気分の落ち込み、意欲の低下など「更年期障害」の症状が起きます。
機能の老化:免疫機能説
免疫力の低下は環境、ストレス、そして加齢が大きな原因に
- 免疫は細菌やウイルスといった病原体の感染を認識し、排除するとともに、その病原体の再感染を早期に防ぐシステムです。
- しかしながら、この免疫機能が低下することで、様々な病気を引き起こす可能性があります。
- 免疫機能の低下として知られている原因として、環境やストレスなどが挙げられますが、加齢も原因の一つとされてます。
- またがん細胞を単独で直接攻撃するとされるNK(ナチュラルキラー)細胞の活性も、加齢と共に減少していくことが知られています。
- 免疫機能の低下により、加齢と共に様々な罹患リスクが高まるとされていることからも、ストレスを溜めないことや生活習慣を見直すなど、免疫力のバランスを崩さないことがエイジングケアの有効な手段の一つといえるでしょう。
老廃物の蓄積:活性酸素説
生命活動に欠かせない酸素が加齢の原因に
- 生命維持に欠かせない酸素ですが、生命を脅かす存在となる場合もあります。 酸素は生命活動に必要なエネルギーを生み出す際に体内に取り込まれますが、使われなかった一部の酸素が「活性酸素」となり、細胞を酸化させます。 酸化とはいわゆる「サビ」のこと。サビついた細胞が正常な働きができなくなると、老化が進行してしまいます。また細胞の酸化はDNA損傷の原因にもなり得ます。
酸化ストレスを締め出す生活を
- 活性酸素による悪影響を酸化ストレスといい、体内を錆びさせ、さまざまな病気の元凶となります。
- そしてさらに活性酸素を発生しやすくする環境が、現代の私たちの周りにはたくさんあるのも事実ですが、主な原因は毎日の生活習慣ともいえます。
- 紫外線に当たること、ストレス、喫煙や大気汚染の環境、また脂質の多い食事や、添加物の多い食生活も活性酸素を発生しやすくする原因となるのです。
- 高速での長距離移動も実は酸化ストレスを増加させる要因です。飛行機や新幹線で長距離を移動すると、体に思わぬダメージを与えています。移動後はゆっくりと身体を休めることを心がけましょう。
- このような酸化ストレスを緩和、予防するのに抗酸化物質があります。ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールといったものを含んだ食品を意識して摂取することをお勧めします。
老廃物の蓄積:糖化反応説
生命活動に欠かせない酸素が加齢の原因に
- 近年注目されている新たな老化の原因の一つが糖化(AGEs)です。これはAdvanced Glycation Endproductsの頭文字をとったものです。
- 糖はコラーゲンなどのタンパク質とくっつく、キャラメルゼーション(糖化現象)と呼ばれる性質があります。
- 身体の中の老廃物の一つが酸化による「錆び」とすると、糖化は「焦げ」だといわれます。
- 糖化の状態を簡単にいえば、身体中に汚い糖分が染み付いた状態です。
- 糖化が原因で高血糖値、高脂血症、高血圧など、つまりメタボの三大要素全てに関係があり、糖分の代謝とそのコントロールはこれからの重要課題といえるでしょう。