トレチノイン酸による小じわの改善ですが、塗るお薬はかなり使用に慎重になるものと聞きました。人によっては肌がかさかさしてしまうとか。 日にちを置いて使用しても効果はあるのでしょうか? また別のことですが、やはり暖房の効いた室内では加湿器を使った方が肌に良いのでしょうか? さらに肌のうるおいを保つために積極的に摂取した方が良い栄養素と食物を教えてください。
- 質問:さやか 30代後半女性
- 回答:AACクリニック銀座
表皮の細胞は表皮の一番深い基底層で生まれてから、徐々に表面に押し上げられてきて、やがて角質となり、最後は垢となって皮膚からはがれていきます。この表皮の細胞の一生のサイクルを皮膚のターンオーバーと呼び、約4週間かかることが知られています。
大多数のしみは、表皮の基底層周辺にメラニン色素が沈着しています。この層にはメラノサイトと呼ばれるメラニンを作る細胞があります。通常市販されている美白剤(医薬部外品)は、メラノサイトがメラニン色素を新しく作る量を減らすような働きをする有効成分が微量含まれてはいますが、非常にその作用が弱いうえに、現在沈着しているメラニン色素を外に出してしまうような作用が弱く、すでに存在しているしみは良くならないことが多くみられます。トレチノインの作用機序は、表皮の深い層にあるメラニン色素を外に出すことにあります。トレチノインは表皮の細胞を活発に増殖させるために、表皮の細胞はどんどん押し上げられていき、そのときにメラニン色素を一緒に持って上がっていき、2~4週間でメラニン色素を外に出してしまいます。これがトレチノインの特長です。一定期間、ヒドロキノン(ハイドロキノン)を使用し、メラノサイトに新しいメラニンを作らせなくしておきます。そうすると結果的に、表皮はメラニン色素の少ない、きれいな新しい皮膚に置き換えられることになります。
ここで問題なのが、どの程度の濃度のトレチノインを、どのような間隔で、どれくらいの期間使用するかということです。これは皮膚に対する侵襲と効果をどのように判定していくかにかかっています。症状と、副作用との兼ね合いになってきますので、必ず専門機関を受診し、適切な診察、加療をしてもらうことをお勧めいたします。
さて、保湿ですが、最近では四季を問わず、空調が整っており、これが皮膚に悪影響を及ぼすことも少なくありません。ご指摘のように、加湿器は有効だと思います。 皮膚の保湿には角質細胞間脂質(セラミド)・皮脂・天然保湿因子が関与しています。セラミドは、スフィンゴ脂質・コレステロールエステル・コレステロール・脂肪酸から構成されています。これらは角質細胞の間にあって、角質を保持しています。これらを効率よく摂ることが保湿に良いことになりますが、日常生活での摂取量を考えると、あくまで予防効果でしかありません。サプリメントなども考慮して、バランスよく摂ることがよいでしょう。