アンチエイジング五感道場「We Are What We Eat」~私たちのからだは「私たちが食べたもの」でできている~
生物として本来持つ感覚“五感”も、年齢と共に衰えていきます。老化予防の方法として、見た目のケアやインナーケアなど様々な方法がありますが、本企画では “五感”に焦点を当てたアンチエイジングを実践するコツをお教えします!
ガイドしてくれるのは、アンチエイジングや美について議論を深めながら追求していく双方向型セミナー「塩谷塾」の卒業生たち。それぞれの専門分野における、“五感”に特化したアンチエイジングの秘訣とは?
食事は豊かに、楽しく、笑顔を忘れずに。
雑踏の通りを抜けて角を曲がれば静寂ないつもの見慣れた小道。
そこにある「ドラえもんのどこでもドア」に吸い込まれた私の目の前には、甍の波が望める別世界が広がっていた。
複雑なカーブを描くテーブルには食欲をくすぐる指紋ならぬ鼻紋で保証された牛タンパクと、これから開催されるオペラにぴったりの、いぶされた鋳物の円形の鍋がステージとして用意されていた。
溶き卵と香り高きトリユフの小鉢でお出迎え。
さあ皆さま方、楽しみましょう。
食は目で見て、香りを聞き、演舞する具材を愛で、歯でエッセンスを絞り、舌上で輪舞させるもの。
免疫力の増強につなげるようにからだに働いてもらいましょう。
食事は、豊かに、そして笑顔を忘れずに楽しく。
きっと栄養、吸収ともに効率アップするはずです。
私たちのからだに必要不可欠なタンパク質
体の主要な構成物質であり、エネルギー源となる三大栄養素は「タンパク質」「脂質」「炭水化物」の三つです。
その中でも牛肉などに代表される「タンパク質」は生命活動を維持するためのエネルギー源であり、体内でも多彩な役割を持つ重要な役割を担っています。
食べ物として摂取されたタンパク質は、消化酵素によりアミノ酸に分解され、小腸により消化吸収され肝臓に吸収代謝されます。
体力低下の著しい方やアスリートなど短期間で吸収速度を速めたい時は、消化酵素で分解する必要のないアミノ酸を直接摂取することで効果的に栄養補給が行えます。
摂取したタンパク質の分解吸収によって得られたアミノ酸は細胞内や血液中にも「遊離アミノ酸」として蓄えられ、生体の機能を維持するために重要です。
タンパク質のさまざまな役割とは?
タンパク質はおおまかに以下のように分類され、それぞれ役割があります。
●体をつくるタンパク質(構造タンパク質)
皮膚、粘膜、爪、消化管上皮、筋肉などあらゆる組織を構成する材料となります。 特に「コラーゲン」は重要なタンパク質であり、歯肉やあごの骨などの周囲組織や身体の健康維持のためにとても重要です。
●栄養を体中に運ぶタンパク質(運搬タンパク質)
「アルブミン」は血液中の酸素を全身へ運ぶヘモグロビンや栄養素を運ぶ役割を担っています。 またホルモンやミネラルにはそれぞれ専門の運搬タンパク質があり、結合することでホルモンは安定化すると同時に不活性化するため、活性化の度合いを調整役も担っています。 鉄等のミネラルは遊離イオンの状態で存在すると、身体にとって有害な活性酸素を発生することもありますが、タンパク質と結合することにより調整されます。 身体に薬剤が投与されるとアルブミンと結合して体内を移動しますが、運搬タンパク質が不足していると、薬効も弱まる傾向があります。
●体の機能を調節するタンパク質(機能タンパク質)
消化酵素であるアミラーゼ、血糖値を下げるインスリン等のホルモンや、粘膜の免疫機能を司る免疫グロブリンAなどの抗体もタンパク質です。
ビタミン・ミネラルなどの栄養素と結合する受容体などもタンパク質から作られます。
また、セロトニン・ドーパミン・ノルアドレナリン・γ‐アミノ酪酸などの脳内伝達物質の原料もタンパク質であり、これらがうまく作られないと集中力の維持、情緒の安定、認知機能などに悪影響を及ぼすこともあります。
熱や酸化に弱いタンパク質
タンパク質とはどのような物質なのでしょうか。
分子構造式を見ると、アミノ酸が単純に一直線をしている訳でなく、各々の分子が電気を帯びているか、3Dのような立体構造をしています。さらに他のタンパク質と絡み合って複雑な形状をなし、初めて生理的な役割を果たします。
しかし、熱や酸化に弱く、本来の構造を失うとタンパク質本来の役割を果たせなくなります。
このタンパク変性をいかに防ぐかが肉体の健康レベルを高く保持するためにも非常に重要となってきます。
遺伝子が酸化ストレスで損傷すれば、がん発生の大きな要素となるでしょう。
糖尿病や動脈硬化・生活習慣病などの予防には、物質を酸化させる因子をいかに取り去れるかが重要となります。
毎日摂りたいタンパク質
私達の身体が強い免疫力を持って健康維持するために、タンパク質が大きな要素を占めているということがお分かりいただけると思います。
では、どの様なタンパク質をどれくらい摂取すればよいのでしょうか。
私たちの生命活動に必要なアミノ酸の素性という面からみれば、植物性タンパク質より動物性タンパク質の方がおすすめ。肉には体内での吸収率が高いヘム鉄も多く含まれ、ビタミンB群も豊富です。
脂質や糖質は、中性脂肪やグリコーゲンの形で体内に蓄えることが可能ですが、タンパク質にはそのような機能がありません。不足の場合は筋肉などから取り出されます。そのためタンパク質は必要な量だけ毎日摂取する必要があります。
体内のタンパク質を減らすことなく、強い免疫力を保ち健康維持するのに、少なくとも体重1kgあたり1gのタンパク質摂取が必要ということです。成長期や激しい運動など多量なタンパク合成が必要とされるには時期には必要量が増加します。
牛肉のタンパク質量を考えてみると、赤身ヒレ肉100gにふくまれているのは20g程度。かなり意識して摂取することが必要です。
フレイル予防の重要性
近年、「フレイル」という言葉をよく耳にするようになりました。
「フレイル」とは年をとり未病ではあるが虚弱になった状態、体や心のはたらきが弱くなった状態を指します。要介護に陥る前段階として位置づけられています。
フレイル予防のためにも、健康な口腔の重要性が再認識されて、楽しく、効率よく咀嚼(そしゃく)する必要性が叫ばれています。
ぜひ皆様方、よく噛める、飲み込める、おいしく食べられる等々と口腔内機能を完全にしておく努力も健康維持・増進のためにも、その基本をお忘れなくお過ごし下さい。
疲れやすくなった時、フレイルに陥る大きな原因に、サルコペニア(筋肉減少症)・ロコモティブシンドローム(運動機能不全)等が挙げられます。
予防のための最も必要な栄養素はアミノ酸で代表されるタンパク質、鉄・亜鉛などのミネラルやビタミン類。これらの栄養素を積極的に摂取し、健康寿命を伸ばし、更にアンチエイジング効果を追求しましょう。
健康寿命を伸ばすことは、超高齢社会へと進行する日本の重要課題とされています。
病気が発症し進行後の医療(川の下流でのアプローチ)よりも、発症する前の段階でリスクを発見し介入していく医療(川の上流でのアプローチ)の方が、効果的なのは明らかです。
歯科から見た健康づくりのポイント
お口が「栄養を摂取する消化器官の入り口」であり「身体の中で最も慢性炎症の起こりやすい場所」であることから、まさに疾患形成の前段階でのアプローチであり、お口の疾患治療ばかりでなく健康寿命を伸ばすという重要なミッションも担っています。生活習慣病は、歯科疾患と無関係なようですが、近年とみにその因果関係が解明されてきています。
歯科から見た健康づくりのポイントは、
●消化器官や呼吸器官の入り口であるお口の中を清潔に保つこと
●お口はものを咀嚼(そしゃく)する機能を保ち、お顔の変形などを来たさないためにも、あらゆる努力を惜しまないことです。
それは生活習慣病と言われている循環器疾患、代謝性疾患の進行・重症化の原因として、齲蝕(うしょく:いわゆる虫歯)や歯周病の悪化、そして咀嚼(そしゃく)不全などの歯科疾患が深く関係しているからです。
歯科で行うメインテナンスは、お口のケアは勿論、血管系に汚物を入れないためにも大変重要な点検を行う作業なのです。
細菌や炎症性物質が血管内に入り込む(歯原性菌血症)ことは、血管壁が傷つき、やがて血管内にコブができて狭くなり、動脈硬化の原因にもなります。また、腫れた歯肉から出る炎症性物質が血糖値を制御するインスリンの働きなどを阻害するように、慢性炎症は身体のすべての代謝にも悪影響を与えます。
人は血管とともに老いるといわれます。歯周病予防はアンチエイジング・フレイル対策の実践であり、血管を守る予防的行動とも言えます。
物が噛めないと肉や野菜などを敬遠しがちになり、ビタミン・食物繊維・タンパク質など重要な栄養素が不足します。
反対に柔らかい食材である、炭水化物(糖質、高GI食品)の過食傾向を示します。必然的にカロリーは充足できてもタンパク質低栄養から筋肉量低下を招くのです。
結局は咀嚼力(そしゃくりょく)の低下が、寝たきりの初期要因に極めて大きく関与しています。
アンチエイジング(容姿、生活、寿命の管理)・サルコペニア・ロコモテイブシンドローム・フレイル等の問題を含めて、全身の健康を育てるのが歯科医療の役目になってきています。
適切なお手入れで、お口の臭いもシャットアウト
他方、外国人旅行者の帰国時に日本の印象についてのアンケート調査によると、75.2%の方からの回答として「口臭に辟易した」「早く、電車から下車することばかり考えていた」等々と負の回答が見られたとの報告があります。
別の日本人向けのアンケート調査では、
Q1)友人、知人の口臭が気になったことがありますか?
YES,94,2% NO,5,8%(net121名)
Q2)そのことを相手に指摘しましたか?
YES,15,7% NO,84,3%
という結果が発表されていました。
勿論、重篤な内臓疾患などが原因の方もいらっしゃると思いますが、ほとんど歯科口腔内疾患が原因だとコメントされていました。
嗅覚は、脳の器官の一部が外部と直接的に接する感覚器であって、頭脳を働かせ高度な思考回路を駆使し『香を聞く』などと表現される香道のような、異次元の世界を探索する雅な文化をも支える感覚器官です。
異物臭のない健康な生活を送るために、歯周病、扁桃膿栓、全身健康状態改善等の専門的な治療が必要かと思いますが、ほかに問題がなければ、歯垢・歯石・舌苔の沈着が口臭の原因かもしれません。これらには、口腔ケアでの除去が有効な方法です。
口腔内は爽やかに、生活習慣病やウイルス性疾患の予防もかねて健康で会話や食事を楽しみたいものです。
吉岡 重保(SHIGEYASU YOSHIOKA) 歯科 吉岡医院 院長 【経歴】 1972年大学卒業以来臨床歯科を追求してきています。 |
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