アンチエイジングニュース

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5年前、僕は「アンチエイジング塩谷塾」を立ち上げた。

中心課題を「美しく年を重ねる」に置き、

人はなぜ老いるか?

若さは美か?

そもそも美とはなんぞや?

といった、いわばすぐ役には立たぬ課題について、それでもそこに興味を抱く塾生を相手に討論を重ねてきた。

20年前の定年退官まで、僕は形成外科医として美容医療に関わってきた。

その中心手技は美容外科である。

やがてレーザーやヒアルロン酸注入など侵襲の少ない手法が開発され、少しずつメスに取って代わり、また、患者のメス離れがはじまり、美容外科は美容皮膚科と変貌し、さらにはアンチエイジングの衣をまとうようになった。

今思うに現役の時はひたすらメス捌きに心を奪われ、患者の心の問題に深入りすることはなかった。

平たく言えば当面の問題解決、HowそれもHow toという手法に心を奪われ、Whyにたち戻る余裕がなかった。

そうはいっても2000年、「美容外科の真実」を出版した時に、〜メスで心を癒せるか?〜を副題とし、そのなかで執拗に手術を繰り返すH嬢にふれたのは,その時点でも、美容外科患者の動機付けが気になっていたからである。

なぜ、女性は美に命まで賭けるのか?

医療行為はリスクを伴う。たとえ注射一本でも不幸な転機を取ることはある。

まして、健常な皮膚にメスを入れ、脂肪を除去し、筋肉を動かせば、それなりの危険は覚悟しなければならない。

 この疑問に答えを与えてくれたのは、3〜4年前に評判になった映画、ヘルタースケルターである。

 

4.美の呪縛

 

主人公のリリコは女性は美しくさえあればが全てが手に入ると信じ、最新の美容外科で全身を改造し、タレントとして頂点を極める。

だがやがて、ライバルとして出現した天然美女の若さにはかなわず、無理を重ねて一挙に転落の道をたどる。

岡崎京子の人気漫画が映画化されて評判を呼んだが、僕はその時の蜷川監督のコメントが心に響いた。

“これで描きたかったのは、生まれた時から女性を苦しめる「美のヒエラルキー」である。

女性は生まれた時から美しくなければ相手にされない。見た目によって差別を受ける。美しくなければ存在しない。“

それは蜷川監督自身、父から容姿に恵まれた妹との差別待遇を受けた痛い体験でもあったという。

そして彼女はこうも言っている。

“全ての女性の中にリリコは存在する。”

そう、美容医療を希望して我々を訪れる患者たちは、問題の大小を問わず皆、「美のヒエラルキー」に悩むリリコを抱えているということにきづかされたのである。

一言で言えば誰もが「容貌コンプレックス」となるかもしれないが、蜷川はそれをグロテスクなまでに描いたにすぎない。

 第期と第期の塩谷塾ではまず、この「容貌コンプレックス」を「容貌のメッセージ性」という切り口で分析した。

そして第Ⅲ期と第Ⅳ期ではそれをさらに発展させ、「老いと美とエロス」という括りで討議を重ねた。

これからその結果を少しずつこのサイトでご紹介していきたい。

ちなみに今年の第Ⅴ期はこれを更に発展させ、新たなテーマを掘り起こす所存である。

来月にカリキュラムと募集要項を発表するが、今回は新規参加のみならず、すでに受講された塾生の方々の参加も歓迎する。

Dr.SHIOYA2 塩谷 信幸(しおや・のぶゆき)
アンチエイジングネットワーク理事長、北里大学名誉教授、
AACクリニック銀座名誉院長、創傷治癒センター理事長

現在、北里研究所病院美容医学センター、医療法人社団ウェルエイジングAACクリニック銀座において診療・研究に従事しているほか、日本形成外科学会名誉会員、日本美容外科学会名誉会員として形成外科、美容外科の発展に尽力するかたわら特定非営利活動法人 アンチエイジングネットワーク理事長、日本抗加齢医学会顧問としてアンチエイジングの啓蒙活動を行っている。

【著書】
一年で一歳若返る/アンチエイジングのすすめ(幻冬舎)
美容外科の真実/メスで心は癒せるか?(講談社)
40代からの/頭と体を若返らせる/33の知恵(三笠書房)
「お若いですね」と言わせよう。(ゴルフダイジェスト)
など
ブログ『アンチエイジングブログ!』更新中

 

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