第Ⅰ章 鏡よ鏡(6)「男も見た目2」
彼女が帰宅した直後、牧師の恐れた事態が展開する。
川に身を投げて自殺を図った彼女は、次のように牧師に告げて息を引き取る。
“ジャックさんを一目見たとき、あたしはたちまち、自分がお慕いしていたのはあなたじゃなくて、あのかただったことを悟りました。あのかたは、あなたにそっくりの顔をしてらしたのです。というのは、つまり、あたしが胸に描いていたあなたのお顔に、そっくりだったのです。・・・”
と、悲劇は幕を閉じる。」
中学時代に感激しながら読んだ時、僕はまだ洗礼を受けていなかった。
いま、読み返すと、ジッドの全ての小説がそうであるように、カトリシズムとプロテスタンティズム(特にカルヴィニズム)との、そして自由人としての相克が、底流にあることはよくわかる。
だが昔は、そのような素養がなくも、いや、ないがゆえに、純粋にその悲劇性に感動したものだった。
そして今は?
映画「永久に美しく」での主演女優のセリフ、
“老いは残酷なものよ”
を鏡を前にした牧師に重ね合わせ、反芻している。
僕が言いたい事は、男でも「見た目」に捉われるという事だ。しかもその「見た目」の主役は、「若さ」と言う事でもある。
面白い事に「見た目」へのこだわり、つまりオシャレは、中世、日本では戦国時代には男がお株を取っていた。
それは緋脅しの甲冑、羽織袴などに代表される。
さらに動物の世界では、孔雀を持ち出すまでもなく、ライオンでも昆虫でも爬虫類でも、派手な出で立ちはオスの専売特許なのである。
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塩谷 信幸(しおや・のぶゆき) アンチエイジングネットワーク理事長、北里大学名誉教授、 AACクリニック銀座名誉院長、創傷治癒センター理事長 現在、北里研究所病院美容医学センター、医療法人社団ウェルエイジングAACクリニック銀座において診療・研究に従事しているほか、日本形成外科学会名誉会員、日本美容外科学会名誉会員として形成外科、美容外科の発展に尽力するかたわら特定非営利活動法人 アンチエイジングネットワーク理事長、日本抗加齢医学会顧問としてアンチエイジングの啓蒙活動を行っている。 【著書】 |
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