第Ⅲ章 容貌のメッセージ性(3)「老化というメッセージ」「結びに」
老化というメッセージ
今ひとつの重大な容貌のメッセージは、「老化」である。
人は「加齢」とともに容貌も体型もシワやたるみがでてくる。 これが「老化現象」である。我々は本能的に「老化」を恐れるが、これを学術語では「ジェロントフォビア」という。 これが「老化」という死に至る機能低下を怯えるのか、 老化した容貌自体に嫌悪感を覚えるのか、どちらが卵で鶏か、すぐに結論を出すのは難しそうだ。
これからの認知大脳生理学での探求が期待出来るところである。
結びに
生まれ持った顔の造作が本人の意思と関係なく、見る者にどのような印象を与えるのか。その印象を、見た者はどのように「形容」し「表現」するのか。
本章は、我々が日常使う、容貌に対する「形容詞」や「表現形」をピックアップして、それを発信している造作に立ち戻る事で、「容貌の持つメッセージ性」を浮き彫りにする試みであった。これを経て、色々な事が分かってきた。
理由はともあれ、我々はある「形」を心地よく感じ(プリージング)、それを「美」と呼ぶ。見た者がそれに引かれるという意味で「魅力」(アトラクティブ)と言う言葉の方が「美」よりも扱い易いかもしれない。だがそれと同時に、解明された疑問の一つ一つに、更に二つも三つもの疑問が付け加わる。
そもそも、議論上「造作」と「表情」を分けて考えたものの、実際に分けることは可能なのか。
更にまた「メッセージ」と言う言葉は幅が広い。今回扱った形だけでなく、言葉、匂い、色など様々な要素が絡み合う。これらの要素を繋げる研究は、まだこれからだ。
また、見る側の受ける印象、その「表現形」も様々で、「鷲鼻」のように容貌を具体的に指している言葉もあるが、全く抽象的な印象を表す場合もある。
さらにその受け止め方と反応も様々で、分析と整理も必要だが、現在この分野は「認知大脳心理学」として解明されつつある。
ところで、見られる側の願いはおそらくみな同じで、見る人からより好感を持たれる事だ。そのために必要な作業は、容貌の「表現形」を「造作」に落し込み、「容貌」という生まれつきの素材を、如何に装うか、如何に表情で生かすかを考え、実践することだ。そして僕はというと、そこで躓き悩んでいる人が美的、魅力的になる為にアドバイスを与える事が出来るようになりたい。メイクやエステや髪型だけでは解決の出来ない部分に関して、我々美容外科医がどのように手助け出来るのか、考えは尽きない。
>>>『WHY?Anti-Ageing』バックナンバーはこちら
塩谷 信幸(しおや・のぶゆき) アンチエイジングネットワーク理事長、北里大学名誉教授、 ウィメンズヘルスクリニック東京名誉院長、創傷治癒センター理事長 現在、北里研究所病院美容医学センター、医療法人社団ウェルエイジングAACクリニック銀座において診療・研究に従事しているほか、日本形成外科学会名誉会員、日本美容外科学会名誉会員として形成外科、美容外科の発展に尽力するかたわら特定非営利活動法人 アンチエイジングネットワーク理事長、日本抗加齢医学会顧問としてアンチエイジングの啓蒙活動を行っている。 【著書】 |
この記事が気に入ったら「いいね!」しよう
最新記事をお届けします