第Ⅳ章 美の呪縛(2)「美の呪縛とエロティック・キャピタル」「美人の要件」
美の呪縛とエロティック・キャピタル
シモーヌ・ド・ボーヴォワール著の「第二の性」に端を発したウーマンリブ(女性解放運動)の旗手達は、『容姿が良いとされる方が価値があるかのように考えられている』この美のヒエラルキーに当然ながら反発した。
男社会の勝手な不平等な縛りだというのだ。
中でも先鋭分子はナオミ・ウルフである。彼女はその著書「ビューティー・ミス」(直訳すれば「美という神話」だが、僕は「美の呪縛」と訳したい)で、女性が生まれてこのかた苦しめてくる「美のヒエラルキー」を、あの中世の拷問具「鉄の処女(アイアン・メイデン)」の呪いになぞらえている。ちなみに、これは女性の形をした中身が空洞の鋼鉄製人形のことである。片側が蝶番で扉のように開く作りになっており、扉の内側には何本も針が埋め込まれ、囚人を中に入れて徐々に刺し殺すという責め具である。
ウーマンリブの信奉者達は、その美のヒエラルキーの縛りから自分達を解放せんとブラジャーを焼き捨て、肉体を解放したが、結果的には敵である男性を利するとことなり、運動は下火になった。男女同権と騒いでも、権利の公正は主張できても、性別を否定した平等はありえないからであろう。
最近ではその開き直りがキャサリン・ハキム著の「エロティック・キャピタル」という考え方であろう。
彼女の主張はこうだ。
男は女に比べセックスの要求度が三倍も四倍も強い。したがって、絶えず欲求不満である。女性はこの弱みを逆手にとって、セックスという餌で男性を屈服させるべきで、男性のための性の玩具という考えは捨てるべきだと言っている。
これを彼女は資産の一つと数え、エロティック・キャピタルと呼ぶ。
美人の要件
ここでちょっと美人の要件を列挙すると
1.「平均顔」
2.「ネオテニー」
3.「対称性」
4.「お肌すべすべ」
などとなる。
1.平均顔:コンピューターで3人の顔を重ねて平均値を出したのだが、数が増えるほど見た目は整った顔になってくる。そういう意味で美人の顔というのは平均顔である。だから平均というのが一つのキーワードとなる。
2.ネオテニー:こうして美人を作っていくと、女性の場合にはどんどん少女の顔になってくる。目が大きくて下半分が小さい。これを「ネオテニー」と言う。2つ目のキーワードは「ネオテニー」=幼児化である。
3.対称性:もう一つは対称性。ただ、これは完全な対称性ではない。ミロのヴィーナスでも自分の顔でもいい。左半分あるいは右半分を対称させた顔の形を合成すると、決して良い顔にはならない。だからほぼ対称という言い方をしておく。
4.お肌すべすべ:最後に「すべすべの白い肌」。これは「りりこ」も言っている、「どれだけ時間とお金をかけてこの白い肌を守っているか」。
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塩谷 信幸(しおや・のぶゆき) アンチエイジングネットワーク理事長、北里大学名誉教授、 ウィメンズヘルスクリニック東京名誉院長、創傷治癒センター理事長 現在、北里研究所病院美容医学センター、医療法人社団ウェルエイジングAACクリニック銀座において診療・研究に従事しているほか、日本形成外科学会名誉会員、日本美容外科学会名誉会員として形成外科、美容外科の発展に尽力するかたわら特定非営利活動法人 アンチエイジングネットワーク理事長、日本抗加齢医学会顧問としてアンチエイジングの啓蒙活動を行っている。 【著書】 |
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