第Ⅵ章 いくつになっても男と女(2)「アンチエイジング何のため?QOL」、「QOLの中心は生き甲斐」
アンチエイジング何のため?QOL
最近はすべてにおいてすぐHOWに走りがちである、しかも安直にHOW TOに。
だがここで改めてWHYに戻って考えてみたい。
その行為何のため?という問いかけである。
アンチエイジングについても、健康長寿を目指すのは結構。そのための手段、HOWは溢れるほどある。だが、その健康長寿何のため?と考えてみる必要があるのではなかろうか。
すると、すぐ思い浮かぶのは「生活の質」である。今流行りの言葉で言えばQOL、クオリティーオブライフだ。
高齢者のクオリティーオブライフを支える要素を三つに纏めてみた。
第一の輪は、「疾病の予防」。やはり病気になればクオリティーを保ちにくい。
これは予防医学の分野であろう。
次の輪は、疾患はないとしても、正常な判断力と体力はある程度は保ちたい。
だがその「判断力と体力」は何のため?
それは「社会生活」を営むため、ということになる。第三の輪である。
この三つの輪に支えられて、高齢者のQOLがある。
第二の輪について考えよう。
判断力と体力と、どちらも大切である。
判断力が欠けて体力がある場合と、体力が欠けて判断力がある場合、比べてみてどうだろうか。
「じりつ」という言葉があるが、漢字では「自立」と「自律」と書き様が二つある。あえて言葉の意味を狭く捉えれば、自立には体力を要し、自律には判断力が必要と言える。
車椅子生活で「自立」はままならなくても、判断力があれば「自律」は可能だ。
反対に認知症で判断力を失った人が、昔ラグビーで鍛えた体力だけは保持していたら?よく会長職に祭り上げたはずの人の歯止めが効かず、どうやって抑え込むか、というトラブルはよく耳にするだろう。
つまり自律は自立に勝る。
QOLの中心は生き甲斐
100歳までゴルフを続けていた僕の親父の話をさせて欲しい。
多忙な内科医だったが、84歳で引退して熱海の老人マンションに入り、毎日好きなゴルフを楽しむようになった。
半年ぐらいは幸せそのものだった。だが、それから落ち込んでしまった。
“親父どうした?”
“信幸、な、俺は今まで毎日患者の為に働いていた、昼夜を分かたず。だが今俺は、自分の楽しみはあるが何も人の役に立っていない。これでは生きている意味がない。”と嘆く。
その後、入っている老人マンションでゴタゴタがあり、最高齢者ということで調停役を頼まれ、円満解決し、“俺でも役に立つ”と生き返った様に元気を取り戻した。
そして、ゴルフ情報を発信するメディア「ゴルフダイジェスト」にて、ゴルフのテクニックの一つ、エージシュートのコツを交え、自分なりの健康法などを連載をし、100歳まで日本全国を講演してまわった。
人間は人に必要とされていなければ生きていられない動物なのだと、痛感したことを思い出す。
ヴィクトール・フランクルが著書「夜と霧」でアウシュビッツの経験を語る中で、“あの過酷な状況で帰ってきた人は何か希望を持っていた”と強調している。その希望を支える重要な要素が「人に必要とされている」という意識であり、それが生き甲斐に繋がるのではなかろうか。
もちろん生き甲斐を生むものとして、現役の時に出来なかった色々なことをすることもあるだろう。
例えば趣味の世界。
人の交わりの中で一番大事なのは、やはり家族友人。
よくボケ防止にいいのは同窓会と言われる。
人間の記憶の中で新しい記憶は忘れていったとしても、古い記憶は覚えているもの。しかも都合のいいことに、いい記憶の方が思い出としては残りやすいので、昔の友達との付き合いでそれを思い出すのが若返りに繋がるのではないだろうか。
改めて考えると、ヨーロッパやアメリカのレストランへ行く時は、だいたい男女のペアが前提になっていた。男同士、女同志で行くと断られはしないが、歓迎されない雰囲気はあった。
女性同伴だと、予約で席が一杯のはずが、途端に席が空くのは面白い。それも美女の度合いに応じて上等な席へ。
しかし、銀座など、気の利いたレストランでランチをしていると、8割から9割が女性だけである。不思議なのは、男性はどこに行くのかだが、どうも大方はコンビニ弁当のようである。
僕なんかは、仕事話は別として、野郎と一緒に飯を食ってもちっとも美味くないので、女性にお付き合い頂くのを旨としている。
>>>『WHY?Anti-Ageing』バックナンバーはこちら
塩谷 信幸(しおや・のぶゆき) アンチエイジングネットワーク理事長、北里大学名誉教授、 ウィメンズヘルスクリニック東京名誉院長、創傷治癒センター理事長 現在、北里研究所病院美容医学センター、医療法人社団ウェルエイジングAACクリニック銀座において診療・研究に従事しているほか、日本形成外科学会名誉会員、日本美容外科学会名誉会員として形成外科、美容外科の発展に尽力するかたわら特定非営利活動法人 アンチエイジングネットワーク理事長、日本抗加齢医学会顧問としてアンチエイジングの啓蒙活動を行っている。 【著書】 |
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