健康に効く話(32):仕事のできる人は早死にする!? 丁宗鐵医師の著書にびっくり!
健康に効く話(32):仕事のできる人は早死にする!? 丁宗鐵医師の著書にびっくり!
仕事をバリバリこなし、仲間と元気に夜遅くまで酒を飲む。睡眠時間は短くても大丈夫。海外出張で世界中を飛び回っているけれど、時差ぼけに困ることはなく、精力的に仕事をしている……。「できる人」「成功者」と言われる人の典型例です。最近は女性でもこういうタイプが増えてきたように思います。
できない人たちから見ればうらやましい限りですね。でも、健康面から考えると必ずしもそうではないようです。
日本薬科大学教授で医師の丁宗鉄(ていむねてつ)先生が書いた『自分で長寿をデザインする』(ビジネス社)には、こうした「できる人たち」ほど健康を損ないやすいという衝撃の事実が解説されています。
漢方医学では「証」(しょう)と言って、その人の体質を診断した上で、どの薬を使うかを決めていきます。さまざまな証のうち代表的なものが「実証」(じっしょう)と「虚証」(きょしょう)です。前者は冒頭に紹介した「エネルギッシュで無理がきくタイプ」、後者は体力がなく、無理がきかない「虚弱体質」のことです。
丁先生はこれまで多くの患者を診てきた経験から、実証の人は突然死やがんを発症しやすく短命で、がんに至っては実に9割が実証だったと言います。
それはなぜか。実証は無理がきいてしまう上、体のセンサーが鈍感だからというのです。例えばほんのちょっと捻挫しただけで大仰に痛がって、「歩けない」というのが虚証、これに対して、骨折してもスポーツをやるような人は実証です。痛みに鈍感なのです。
また、アルコールで肝機能が悪化すると、γ(ガンマー)―GTPという検査数値が高くなります。一般的な基準値は50U/I以下ですが、実証の人はこれが250くらいあっても何の異常も感じることなく、精力的な毎日を送るケースが珍しくないのだとか。つまり、実証の人は不調を見逃しやすいのです。恐ろしいことですが、「そういえばあの人も」と、身近な実証人間が思い出されるのではないでしょうか。
自分がそうでなくても、「夫が実証」であったりしたらことは重大です。実証である旦那さんのペースにつきあわされた奥さんが体調を崩してしまうケースもあると著書に書かれていました。もっとも、大切なのはバランスであり、虚弱で体力のない虚証も、ある意味で不健康です。どちらにも偏らないバランスのいい体(漢方でいうところの中庸)こそ理想です。そのために大切なのはやはり食事や睡眠などの生活改善です。
ただし、丁先生は「食事内容よりも、規則正しく食べることが重要」「中年以降は1日2食」など、独自の養生法を提唱しています。体質を変えるためには漢方薬も有効です。詳しくは本に書かれているので、興味のある方にはご一読をお勧めします。
◎ 虚証の特徴
・ 体力がない
・ 疲れやすい
・ 食が細い
・ 感染症に弱い
◎ 実証の特徴
・ 元気がある
・ 無理がきく
・ 食欲が旺盛
・ 寝食を忘れて、物事に取り組む
狩生聖子=医療ジャーナリスト。著書に『ぐっすり眠る! 37の方法』(宝島社新書)などがある
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