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「ココアを飲んで、痴呆を予防」――ハセ博士のヘルシー情報最前線(138)

 超高齢化社会の訪れにより、さまざまな問題が出てきています。中でも、痴呆老人をめぐる問題が深刻で、とても他人事には思えません。
 これは単に日本だけの問題ではなく、世界中で痴呆予防の方法が捜し求められています。

 さて、今回、ココアに含まれる抗酸化物質であるフラボノールが、脳の血流を増やして脳機能を活性化し、痴呆の予防に有効であることがわかりました。

 これはノッチンガム大学のMacDonald氏らが、全米最新科学学会に報告したものです。

 パナマ諸島に住むクナ(Cuna)族の人々の間には、高血圧や痴呆が少ないことが知られているそうです。
 ところが、このクナ族の人が現地を離れて都市部に移住するとすぐに高血圧になってしまうことから、人種によるというよりも食生活が関係しているのではないか、と考えられていました。

 この民族は、パナマ原産のココアをよく摂りますので、ココアなどに多く含まれるフラボノールがに健康によい効果を与えるのではないかと、この研究者はメボシをつけました。

 そこで、実際にボランティアの人にココアをのんでもらい、同時に核磁気共鳴診断装置(MRI)を用いて脳機能を調べました。

 その結果、ココアを飲んだときには、脳の血流の動きが顕著に高まっていることが明らかになりました
 すなわち、実際にココア由来のフラボノールにより、脳の血液の流れがよくなることが示されたわけで、痴呆や高血圧、その他の様々な心疾患の予防に有効であると期待されます。

 今回は健康な人について調べたものですが、今後は痴呆患者さんについて、ココアの効果を調べる予定だそうです。

 ところで、チョコレートなどのココア製品にはあまりフラボノールは含まれていません。苦みがあるので通常は除去されるためですが、そのようなフラボノールのあまり入っていないチョコレートを多く摂っても効果は期待できません
 今まで邪魔者として取り除かれるフラボノールが、今後は脚光を浴びる可能性がありそうとのことです。

 上の研究とは異なるのですが、Salk研究所のHenriette van Praag氏らは、フラボノールの一種であるエピカテキン(Epichatechin)の効果について報告しています。

 エピカテキンを餌に混ぜてマウスに与えたところ、マウスの記憶力が向上することが、迷路テスト結果で分かりました。
 エピカテキンが脳にある海馬領域に作用し、記憶を高めるのではないかということ
です。

 また、高齢者の血圧に対する効果を調べたものとしては、オランダで行われた研究が知られています。
 それによりますと、毎日、フラボノールを含有するチョコレートを1/3枚食べると血圧が低下し、実際に死亡率そのものが低くなったという結果が得られているそうです。

 しかし、チョコレートには糖分も多く含まれていますので、糖尿病の危険が高まることが危惧されます。
 健康目的にチョコレートを食べるなら、あまり糖分が入っておらず、代わりにフラボノールが多く入っているものを選ぶ必要があります

ハセ博士=薬学博士。国立大薬学部や米国の州立大医学部などで研究や教官歴がある。現在は製薬企業で研究に従事している

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