ヒアルロン酸やボトックスの合併症
しわが気になる部位にヒアルロン酸やボトックスを注入する「フィラー治療」は、メスを入れずに大きな効果があがると評価されています。しかし、トラブルや合併症が全くないわけではありません。
ヒアルロン酸やボトックス注入治療などの、「フィラー注入治療の注意点」を、自由が丘クリニックで開催された「メディカルビューティープロジェクト」で、佐藤英明先生(北里研究所病院美容医学センター長)が「注入異物の合併症」と題した講演で説明されました。その講演内容を紹介しましょう。
ヒアルロン酸やボトックスは、注入後少しずつ体内に吸収されていき、効果が持続するのは約3ヶ月~6ヶ月といわれています。そのため、効果が薄れてきたら繰り返し治療を受ける必要があります。しかし最近、吸収されない(されにくい)注入剤が注目されてきています。患者側からしてみたら、「吸収されない=繰り返し治療を受けなくてよい」と飛びつきそうになりますが、美容医療を専門にした医師らは、「吸収されない注入剤はなるべく使わない」ことにしているそうです。
佐藤先生によると、主な理由はふたつあるとのことです。
ひとつめの理由は、人の体は基本的に自分の体のものではないものが入ってくると「異物」だと認識し、たとえ注入時は問題がなくても、10年後、20年後になって突然拒絶反応を起こすことがあるとのこと。佐藤先生のところには、施術を受けたあと、数十年の長い時間を経てから深刻な被害を受ける患者さんがたくさん来たそうです。
もうひとつの理由は、溶けない注入剤は固形物と違い除去が非常に難しい、または不可能なことがあり、合併症を起こすと治療が困難だということです。
現在使われている注入剤で、特に注意が必要なものにアクアミドがあります。炎症や痛みの持続、壊死、変形などの重大な合併症が報告されているとのことです。
アクアミド
90%が水分で構成された注入剤。ヨーロッパでは長年使用されているが、米国や日本では安全性が確認されていない。
また、注入箇所によってリスクの少ない部分と、リスクの多い部分が紹介されました。
●ヒアルロン酸やコラーゲンによるフィラー注入の場合
【リスクの少ない部分】法令線、マリオネットライン
【リスクの多い部分】目の周り(凸凹が出やすい)
●ボトックス注入の場合
【リスクの少ない部分】額の上、目尻、鼻根、マリオネットライン
【リスクの多い部分】眉の上、眉間(表情に変化)
佐藤先生のところには、他院で安全性や効果に疑問がある注入剤を使用されたり、経験や技術がほとんどないドクターが施術して、重大な合併症が起こり駆け込んで来る患者さんが少なくないそうです。実は、形成外科や皮膚科医でなくても、医師免許があればフィラー注入治療を患者に施術できるのです。
佐藤先生は、フィラー注入治療を受ける際、最低限注意すべき点を挙げました。
・基本的に「溶けない」「消えない」とうたっている注入剤は避ける
・形成外科・皮膚科医として、最低3~5年の診療経験があるドクターを選ぶ
・形成外科学会、美容外科学会などの学会認定医が常勤している医療機関を選ぶ
メスを使う外科手術と違って、フィラー注入は気軽に受けられる印象が強くありますが、医師によって安全性と効果がかなり異なります。治療を考えている方は、まずは、佐藤先生が挙げられた注意すべき点をクリアする医師や医療機関に相談してみましょう。
(AAN WEB編集部・松本理恵)
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