アンチエイジングニュース

「アンチエイジングの専門家がナビゲート」(ガイド:熊本悦明

まずは男女性分化の第一段階「性の内外性器の男性化」について解説する

 

§男女性分化の仕切りは、実は男性ホルモンの一人相撲
 “男と女への性分化”と一言でいっても、生物学的には性腺形成から脳の性分化まで色々な段階での性分化があり、全体としての個人の性別形成はかなり複雑な問題が折り重なって組み立てられるといえます。
 この話は、少しややこしいのですが、しばらく話を聞いて下さい。これを理解して戴かないと、男性創生にまつわる興味ある話に繋がらないので、申し訳ありませんが少し辛抱して下さい。
 
 ご存知のように、基本的な性別は、性染色体の性差:男《XY》・女《XX》で決まり、Y染色体上の遺伝子SRYの存在が鍵であり、その遺伝子の働きで睾丸が創られることが、すべて性別発生の出発といえます。その睾丸から分泌される男性ホルモンによる様々な男性化機序、いうならば、基本型の女性型を男性型に改造していくという、すべて男性ホルモンの働きによる男性への性分化が行われるのです。
 その睾丸が出来なければ、卵巣が出来て女性となるのです。しかし《X》染色体を1つしか持たない例《XO》の時もあります。その場合は卵巣も創れないのですが、性腺が何もできない性腺無形成でも人として生まれてくることが可能なのです。そして男性化機能が働かないという条件は卵巣があるのと同じなので、やはり女性形となって生まれるのです。要するに《Y》染色体により睾丸が出来なければ、すべて素直に女性型となり、睾丸が出来ればそれから分泌される男性ホルモンの働きで、以下にまとめた様な複雑な男性化機序が連続して動いて、晴れて男となって、この世に生れ出る事が出来るのです。

   《一連の男性化機序》 
    a:性の内外性器の男性化
    b:顔や体格などの骨格の性差形成
    c:脳の性分化による男女生理の形成
    d:脳の成文化による心理行動科学的性分化

 
 そこで、男として、臨床的に問題になるのは、全ての男性化機序がしっかり進行したのかという事、この一連の男性性分化作業の出来具合いが良かったかどうか、という事です。
 
 男になるのは、形だけでなく、さらに魂を入れる、aからdまで幾重にもかさなる“男性力による大仕事”が求められているのです。これがまた大変なことといえます。
 まず、第一の男性性分化(a)は、右図の様に、 開かれた女性型性器の左右の扉が男性ホルモンの力で融合され、男子尿道と陰嚢が形成され、はれて男性型となります。

 前項で述べた女子運動選手のセックスチェックで問題となった症例は、一応睾丸は創られてはいるものの、男性化に必要な男性ホルモンの分泌力が十分でなかった為、性器を完全に男性化することが出来ず、完全融合すべき陰裂がかなり開いたままの女子形に近い形で生まれてしまったので、女子と誤診されてたという訳です。

 勿論この内外性器の男性化にも、かなりな個人差はある筈です。例えばペニスのサイズや睾丸の大きさなども、個人的な秘事である為、今まであまり医学的にも検討されてきておりませんでしたが、最近、少し専門的になりますが、器官形成遺伝子であるホメオボックス遺伝子群との関係で、後で述べる人差し指の長さとペニスの大きさに関係があることもなども、少し明らかになりつつありますので、それらについては徐々に後で解説することにますが、その点についてはいまだデーター不足の領域といえます。

 この性器の男性化形成過程が不十分であると、色々な下図の様な正常男性型と成り得ず、女性型から男性型への変形途中の様々な不完全男性化中間型が時々生まれるのです。それを見て知識の無い素人が少し変形した女性と判定してしまう訳です。ただそれもそれ程発生頻度は高くないので、一般的には睾丸が出来さえすれば、殆どの人は問題なく一応男性型に形成され、無事男として、この世に男としてお出ましになるのです。

 ただ問題は、そのように男の形は整ったものの、さらに男の魂をどれだけ入れられて“男らしく”するのか、ということになります。“男らしく磨きをかける道”は、必ずしも平坦なものではないのです

 そこで、とにかく一応男性化第1関門を無事通過したことにして、それに続く厳しく多様な男性化の道程の複雑さについて話を進めて行きましょう。
 上の表の《(b)から(d)の性分化》、すなわち、微妙な、しかし日常的に問題となる、男性らしさが如何に創られるかということは、恐らく多く読者方の関心事であろう思いますので、話を進めたいと思います。

 

>>>『男をもっと知って欲しい』バックナンバーはこちら

 

筆者の紹介

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熊本 悦明(くまもと よしあき)

日本Men’s Health 医学会理事長
日本臨床男性医学研究所所長
NPO法人アンチエイジングネットワーク副理事長

著書
「男性医学の父」が教える 最強の体調管理――テストステロンがすべてを解決する!
さあ立ちあがれ男たちよ! 老後を捨てて、未来を生きる
熟年期障害 男が更年期の後に襲われる問題 (祥伝社新書)

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