男をもっと知って欲しい (13)男の生理は奥深い
「アンチエイジングの専門家がナビゲート」(ガイド:熊本悦明)
男の生理についてさらに説明を
§男の生理は奥深い
前回は夜間睡眠時の副交感神経の亢奮するレム睡眠時に起きる睡眠関連勃起とその最後のレム睡眠時に目覚めて説き自覚する早朝勃起について説明しました。前回解説しました様に、此れはそのレム睡眠時に、寝ていても生きていく為の基本的機能を動かす基本的な生理機能として、胃腸などの内臓器官が活動するのですが、陰茎も内臓器官の一環として活動すると理解していただきたいのです。よく寝る前に物を食べると睡眠中に胃腸が良く活動して栄養を吸収するので太る原因になると巷間言われている生き物人間の基本的生理機能と関連していることを知っておいて下さい。また、男の赤ちゃんのオシメを取り替えるとき勃起しているのが尿が溜まっているからなどと、よく言われているているのも、医学的知識のなさによる訳で、尿が溜まって勃起するなら、男性たるもの仕事中でもやたらと勃起することになると言う笑い話になってしまいませんか?
この生理現象は、女性の身体でも勿論起きていて、陰核勃起や子宮収縮として発現されているのですが、男性側と異なり、全く気付かれない生理現象だけのことなのです。
此れは比較的近年1968年にようやく医学的に認知されて来た機能なので、残念ながら、現在の生理学教科書にも殆ど記載がなく、立派な医師方達でさえ、全く理解していない生理機能であることを知っておいて戴きたいのです。
ところが、問題は、その勃起能が、もう一つ、大事な男の生殖機能として、自覚的な性的亢奮でも機能することで、むしろ”勃起”とは、一般に意識的性欲関連の、はっきり言えばややいわゆるdirtyな生理現象として理解されてしまっていると言えます。言うならば、大事ではあるにしても、かなりエロチックなニュアンスのある生理現象との認識が常識化されてしまっている訳です。そのため、生物学的役割からすれば、当然”陽茎”とも称すべき筈ものを、残念ながら、文化的に、恥ずかしい隠すべき臓器”陰茎”などという汚名を着せられているのではないでしょうか?
いずれにしても、覚醒時に起きる勃起と射精現象についても、もう少ししっかり、正しく理解しておいて戴きたいと思意を強くしております。そもそも思春期における男子性教育は殆どなく、実施されていても極めていい加減な内容の、”男子先生の経験的お話”か、女先生の文学的お話でなされており、女性が自分の生理に対する医学的理解には程遠いレベルの低い理解度と認識しかもっていないのではないでしょうか? 男性自身でさえその有様なので、女性方からの理解度に至っては、真に偏見の塊のようなものと言えます。そこで以下少しこの問題を、医学的に解説しておきたいと思います。
勃起は夜間のものも性的亢奮時のものも、生理的現象として、ペニスのスポンジ状の血液ダムに関門が開気、どっと血液が流入し手、また流失の止められて大きく硬く膨張することなのですが、その関門を開くのは、睡眠時はレム睡眠機構からの、また覚醒時は大脳意識からの刺激が、視床下部にある性中枢を亢奮させ、その指令で、図Aに示した、背骨下端の尾骨の上方にある仙骨部の仙髄副交感神経核が目覚め、ペニスの血管拡張機序が動くことによるのです。
そして男性ホルモンが、仙髄副交感神経核その流入血流を増加させたり、神経刺激に反応する局所の血管拡張機序の感受性を高めてりしているのですが、祖も問題については、勃起不全と絡めて後の別項で説明します。
その仙髄副交感神経核の亢奮の高まりが除々の脊髄内を上に登り、胸髄下部の交感神経射精中枢核に到達すると、前立腺及び精嚢腺が収縮して精液を尿道に放出する。交感神経亢奮があると膀胱頚部は絞めえられているので、っ精液は尿道を通って外に発射され、いわゆる射精になるのです。
この過程を、譬えばピアノ演奏のように創造してみると、まず副交感神経亢奮ではキイをたたいて音を出しているときであり、その音楽の曲想が高まり、演者がペタルを踏んで音曲を高くバーンと響かせる様に、亢奮が交感神経に達し、局所的交感神経亢奮と共に射精が起こると理解していただくと良いのではないかと思っております。その局所交感神経亢奮に連動して、全身的交感神経興奮も起こるので、その亢奮の程度に応じて、発汗してり、動機が激しくなり息が荒れたりするのです。いわゆるオーガニズムと言われるのが、その現象なのです。その亢奮が強いと全身的に疲労感が出て、疲れ寝てしまうことも良くあることなのです。言うならば寝てしまうほどなのが、自然な良好で健康な生理現象と言える訳です。この辺の理解が、余り良く知られていないようです。
此れに関して、よくマスターベイションが、問題になりますが、余り頻会に行うと精液蛋白を消費し過ぎて疲労するので身体に良くないなどと、性教育で語られているのを耳にしますが、此も噴飯もので、医学を知らない説教といえます。人口に膾炙されていて、多くの方が信じ、また引用している、”接して漏らさず”と言う貝原益軒の教えも、全く医学無知の時代の解説といえます。
問題はその射精時における全身的交感神経亢奮の度合いか強く、また頻回であると神経的疲労感が強くなる可能性があり、体調を崩すことになるので、その時点での男性的体力次第の問題、いわばすべて生物学的体力問題なのです。その為、体力の余り付いていない弱い若者や体力の下降している高齢者では、交感神経興奮による疲労感が強く、体調への影響が長く続くことになるので、””交感神経亢奮度と体力とのバランス”をよく考えよ、と言うのが、それらの教えの裏にある真の生理学的論理であることを、正しき理解しては欲しい物です。多くの方々の関心事である為か、誤解や創り話が世に多すぎるのではないでしょうか?
殊に性教育関係の、医者も含めた教育者の方々には、せめてこの程度の知識はもっいぇいて欲しいものといえましょう。殊に現在の学校に於ける性教育担当が多くの場合、若い女性の養護教員の方であるので、このてんの男性生理の理解が強く求められていると感じております。月経機序の知識はかなり一般化しているのに、射精機序は関して余りにも無知な現状は何とかして欲しいものです。
筆者の紹介
熊本 悦明(くまもと よしあき)
日本Men’s Health 医学会理事長
日本臨床男性医学研究所所長
NPO法人アンチエイジングネットワーク副理事長
著書
「男性医学の父」が教える 最強の体調管理――テストステロンがすべてを解決する!
さあ立ちあがれ男たちよ! 老後を捨てて、未来を生きる
熟年期障害 男が更年期の後に襲われる問題 (祥伝社新書)
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