「黒髪がよみがえる」――ハセ博士のヘルシー情報最前線（201）

エージングについては、悩みが尽きませんね。寝たきりや痴呆は勿論のこと、顔のシワ、薄毛、白髪も出来るだけ避けたいですよね。そこで今回は、白髪が元の自然の黒髪に戻る新薬が開発できたという話題です。
ドイツ・リューベック大学と英国・マンチェスター大学の研究者が報告したもので、新たなアンチエージング薬になるのではないかと評判になっています。Ralf Paus博士らは、以前から病気やストレスによる白髪化の原因について調べていました。そして、毛髪にある、黒色の色素を供給するK(D)PTと呼ばれる天然分子の人工合成に成功しました。ちなみにこの分子は、毛髪の色素のメラニンの産生を高めるホルモンとよく似た性質のものだそうです。

次に、円形脱毛（症）や、ストレス障害である休止期脱毛症のような皮膚疾患をもつ、46歳～65歳の6名の女性の頭部の毛包組織に対する効果を調べました。すると、K(D)PTを与えた場合には、毛包組織のメラニンの量が大幅に増加することが分かりました。単に白髪の発生を抑えるだけでなく、元に戻すことも可能とされています。
今のところは、上述のような疾病による白髪に対して有効としかいえませんが、このメラニン産生を増加する物質は将来、エージングに伴う白髪対策にも有用となると、大きな期待が寄せられています。このような成分が入ったシャンプーなどを使うことにより、一生の間に黒髪を保ち続ける時代がすぐ目の前に来ているようですね。今後の研究が楽しみです。

ハセ博士＝薬学博士。国立大薬学部や米国の州立大医学部などで研究や教官歴がある。現在は製薬企業で研究に従事している