アンチエイジングニュース

アンチエイジング教育の今

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高齢化が深刻になる日本。アンチエイジングについて考える取り組みが、中学校から行われているのをご存じだろうか。今回は国士舘中学校高等学校で、現役の保健体育科非常勤講師を務められる新井 遼太氏に、アンチエイジング教育の現場からリポートしていただく。ご自身もまだ26歳という若さで、エイジングとは無縁でるあようにみえるが、アンチエイジングへの意識を高めるべく、日々教壇にたっている。

●なぜアンチエイジング教育が必要なのか

敬老の日、総務省は人口推計を発表した。発表によると、65歳以上の高齢者の人口は2,898万人、総人口に占める割合は、22.7%といずれも過去最高であった。この傾向は、さらに拍車がかかり、高齢化率が2024年には30%を超えると推測されている。
高齢化による受療率の増加や医療の高度化などに伴い、国民医療費は年々増加している。国民医療費は、2007年度時点で約34兆円、年齢階級別に医療費の構成比率をみると、65歳以上が52%を占めている(厚生労働省調べ)。また、2025年度試算では国民医療費は69兆円に膨れ上がるとされており、今後の少子化の問題を含めて、国民医療費の増大は国全体の財政を大きく圧迫していくことだろう。その要因のひとつとして、老人医療費の増大があるとするならば今後の社会では、平均寿命を延ばすことに加えて、健康的なライフスタイルの確立が求められなければならない。
このような社会情勢のなか、発育発達にあたる中・高校生期は、まさに生涯に通じる健康習慣を学び・身につける大切な時期である。そのなかで、今回は本校におけるアンチエイジング教育がどのように行われているのか、保健体育科教員の視点で話を進めていきたい。

●加齢に真剣に向き合う教育

中学・高等学校において、健康教育の中枢を担っている科目は保健体育である。本校における保健体育は、学習指導要領に基づき、明るく豊かで活力のある生活を営む態度の育成を目指し、生涯にわたる豊かなスポーツライフ、および健康の保持増進の基礎を培う観点に立って、内容の改善を図ることを方針としている。
新学期の体育では、全学年で新体力テスト(文部科学省)を実施し、個々の体力の現状を把握するとともに、健康教育への切り口としている。

また、週1時間の保健では、個人及び社会生活における健康・安全について理解を深めるようにし、生涯を通じて自らの健康を適切に管理し、改善していく資質や能力を育てることを目標とした授業を展開している。
そのなかでアンチエイジング教育の主は、「壮年期と健康」・「老年期と健康」と2週に分けて理解するように計画を立てている。

学習のねらいとしては
①加齢(エイジング)現象について理解する
②壮年期の健康課題について学ぶ
③老年期の健康課題を把握する
④いきいきとした老年期のすごしかたを理解する
⑤リハビリテーションについて学ぶ
⑥今後の高齢社会のありかたについて理解する
上記の6点とし、教科書を中心に授業を行っている。

加齢における諸問題、老化のメカニズムや老化により筋肉組織の量と筋線維の数や大きさが徐々に減少するサルコペニアによる筋力低下の問題、ノーマライゼーション等、近年研究されているテーマを取りあげることで、生徒の関心を呼び起こし、ディスカッションを重ねることで、アンチエイジングへの理解を深めている。
授業のなかで生徒は、遠い先のことだからといって楽観視するよりも、身近にいる両親を自分の将来の姿として、重ね合わせることで加齢について真剣に向き合っている。

●健康的な80代を迎えるための現在

そして、授業最後は中・高校生期のライフスタイルが老年期の健康に大きく影響することを強調する。健康的な80代を迎えるためには、健康的な10代が存在する。現在の生活、自分自身のアンチエイジングのありかたを考えてもらうのである。
子どもの体力低下が問題視されている今日、今年度における本校の新体力テストの結果は、男女共にほとんどの項目で全国平均を超える結果であった(Gakken調べ)。また、1週間に3日以上の運動を実施している生徒は全体の65%、1日の睡眠時間が6時間以上の生徒は全体の68%と高率であり、朝食を食べない生徒は全体の5%と低率であった。これらの結果は、本校の健康教育が健康的なライフスタイルの基盤作りに、少なからず寄与していることを示すのではないだろうか。

想定される未来が少子高齢化である以上、国民一人ひとりの健康的なライフスタイルの確立がますます求められてくると思われるが、そのなかで、発育発達にあたる中・高校生期が、健康の保持増進の基礎を培う重要な時期であることは言うまでもない。今後、さらに学校におけるアンチエイジング教育をはじめとした健康教育が、高齢社会を支える重要な役目を担っていくものでなくてはならない。

国士舘高等学校HP

新井 遼太氏
●略歴 
国士舘中学校高等学校
保健体育科非常勤講師日本体育大学卒業
日本体育大学大学院博士前期課程卒業(体育科学)
元バスケットボール女子日本代表スタッフ
私立国士舘中学校高等学校 保健体育科 非常勤講師
私立国士舘中学校高等学校 
男子バスケットボール部監督
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