ピアニスト熊本マリさんのポジティブエイジング
「アンチエイジングトーク」Vol.15
ピアニスト 熊本マリさん
健康で美しく歳を重ね、自分らしく、素敵な生き方をしたい。そんな生活を実践されている方々の健康や美容の秘訣を伺う「アンチエイジングトーク」。第15回のゲストは、熊本マリさん。来年にはデビュー25周年を迎える。先日もエジプトとヨルダンでのコンサートを終え、帰国したばかり。演奏活動に加え、執筆やテレビの司会者など、幅広く活躍されている。女の子なら一度は憧れる「ピアニスト」になる夢を叶え、更に一線で活躍し続けるマリさんに、アーティストならではのアンチエイジングの秘訣に迫ってみることにする。
――ピアニストというお仕事は、体調管理には気を遣われているのでしょうか?
年間国内外合わせて、平均40本のコンサートを行っていますが、やはり演奏は体調に左右されます。以前、風邪をひいて満足できない演奏をして、とても落ち込んだ苦い経験があるの。だから、風邪をひかないようにいつも気をつかっています。とにかく冷やさないこと!そして、疲れをためないこと。ピアニストは、座っている時間が長いので、歩いたり、ストレッチをして筋肉をほぐしたりはしています。そして、野菜をたくさん食べるバランスのいい食事を心がけ、睡眠もたっぷりとりますよ。
――ピアニストが暗譜をして演奏する記憶力には感心させられますし、プラス指を動かすことはアンチエイジングにつながっているのですか?
どうなのかな。確かに、ピアニストは息が長いです。日本では室井 摩耶子さんは88歳の今も現役ですし、指揮者も高齢の方は多い。暗譜や指を動かすことよりも「好きなこと」を続けていることが、自ずとアンチエイジングというものにつながっているのではないかしら?
――マリさんはアンチエイジングをどういう意味だと思われますか?
うーん。アンチという響きがあまりいいイメージではないかな。私自身は年齢を重ねることで、どんどんピュアになってきたから。欲しいものや、やりたい事が明確になってきた。自分のピラミッドの形ができあがって、頂点の三角だけを大切にできるの。もう時間を無駄にできないから(笑)。自分で自分をコントロールできるようにもなってきた。30代頃までは結構ストレスを溜めるタイプだった。でも、今は、グチグチしても意味がないし、その日に忘れちゃう。前向きに考えられるようになったのは、やはり経験の積み重ねだと思います。
――マリさんにとって年をとることはマイナスではないと?
もちろん。たくさんの経験や感動、そしてたくさんの人に会えた。気持ちを豊かにさせてくれた貴重な時間。表現者として、音楽でひとりでも多くの人に喜んでいただくためには、年をとることはプラス。同じ曲を弾いても、若い時とは違う深い解釈ができたりする。それは自分自身でも大きな発見になるし、もっともっといい音楽を届けたいって欲がでてきて…。ゴールはまったくないかな。
――でも年をとったなーと感じることはありますか?
ありますよ。白髪をみつけたり、皺が増えたと気がつく。でも、それで落ち込むことはないわ。白髪は流行のカラーに染めればいいし、皺ができないように手入れをもっと頑張ろうって思うの。私はお金をかけてアンチエイジングするということはしない。出来る範囲のナチュラルかつシンプルでいいから。
――マリさんの著書を読ませていただいて、
マリさんは何か超自然的なパワーの持ち主なのかなと思ったのですが?
フフフ。確かに。今回、エジプトでコンサートをさせていただいたのだけれど、何故かその1年程前に、たまたまお店でクレオパトラが愛用していたカルカデという赤い飴を発見して食べていたの。それにナツメは日本にはあまりないのだけれど、食べる機会が自然と増えていたら、エジプトからコンサートの話がやってきた!日本ではトークコンサートを行っていたけど、エジプトでは通用するのかと不安を抱きながらもチャレンジ。日本の民謡や曲のエピソードも交えてのスタイルは、結果としては大好評。「ジャパニーズ・クレオパトラ」と、現地の新聞にのって、なにか運命的なものを感じちゃった。
――素敵なお話ですね。ピアニストにはお客様の感動がパワーの源でしょうか?
ステージでの演奏はお客様のパワーにかなり左右されます。退屈そうにしているな~、リラックスしてくれているなと、細かく波動が伝わってきます。はじめはシラーっとしていた会場がどんどん熱くなってくると燃えますよ。お客様から、「誕生日に素敵な演奏を聴けて力をもらいました」とか、「先日母が亡くなったけど思い切ってコンサートにきたら気持ちが落ち着きました」とか、「忘れてかけていた気持ちがよみがえりました」といった、パーソナルな感想を伺うことがあります。私の音楽が少しでもお役に立てた、少しでも心地よい時が過ごせたといっていただけることは、何よりの力になります。
――お話を伺っているとマリさんのアンチエイジングの秘訣は「好きなこと」に邁進することなのですね?
私にはピアノが必要だし、ピアノも私を必要としてくれている。そんな気がします。演奏会の前の音楽づくりは、想像力をフルに使う楽しさがあるし、演奏会では顔がキリリとひきしまる程の緊張を味わい、そしてお客様の拍手をいただく感動がある。これからも新しい世界の新しい文化に飛び込んで、演奏をしていきたいの。そうね、アンチエイジングの秘訣は自分の好きなことをみつけることかな?毎日4~5時間、練習はしています。それ以外にもピアノが好きだから自分のために弾く時が今でもありますね。
――そうですか!ですが、記者のような凡人は、そこまで打ち込める好きな事をなかなかみつけられない…。どうすればいいのでしょうか?
別に仕事じゃなくて、趣味でも何でもいいと思います。本を読みまくる、映画を観まくる。眠るのが好きなら、一杯夢をみてインスピレーションを膨らませる。食べるのが好きなら、日本全国のおいしいクッキーを食べつくすのでもいいじゃない。まずは動くこと。動いていけば、きっと好きなのもがみつかる。そしてそれを追及したいという思いが湧くはず。音楽だって、楽器だって、好きだという気持ちがあってやりたいと思えばいくつになっても始められるじゃない!
――なんだかパワーが湧いてきました!ありがとうございます。
最後にマリさんの今後の目標をお聞かせください。
100歳で現役のピアニスト。自分だけの長い歴史をつくっていきたいです。そのためには私自身ももっと経験を積み、想像力を磨いてかなきゃ。
インタビューの間もずっとキラキラパワー全開のマリさん。年を取ることなんかノープロブレム!エイジングを好奇心一杯に楽しんでいきたいという姿勢がとてもチャーミング。そんな彼女が奏でる音楽に、あなたもぜひ触れてください。パワーをもえらえるかもしれません。
(ANN・WEB編集部・熊本美加)
■石田純一&熊本マリ 「作曲家のラブレター」
3月2日(火)18:30 会場:麻生市民館(神奈川)
■宝くじコンサート 東京フィルハーモニー交響楽団
特別演奏会 指揮:円光寺雅彦
3月4日(木)18:30 会場:日立シビックセンター 音楽ホール(茨城)
3月5日(金)18:30 会場:結城市民文化センターアクロス 大ホール(茨城)
■愛の検眼50周年キャンペーン記念 チャリティーリサイタル
3月21日(日)14:00 会場:宇部市渡辺翁記念会館(山口)
■ピアノと朗読で綴る 魔法の絵本
3月28日(日)13:30会場:プラザイースト(埼玉)
★コンサートのお問い合わせはムジカキアラへ
Tel 03-5739-1739(平日10:00~18:00)
ⓒPhoto by Takashi Shigemoto 熊本 マリ |
プロフィール 熊本マリ(くまもとまり) 東京生まれ。5歳からピアノに親しみ、10歳で家族と共にスペインへ移り住む。 1975年よりスペイン王立マドリード音楽院でホアキン・ソリアノ氏に師事。スペイン青少年音楽コンクール優勝。1986年英国王立音学院卒業後、最年少でRecital-Diplomaを授与される。1991年フェデリコ・モンポウ(1893~1987)のピアノ曲全集の録音を完成させ(世界初)、1994年にはプラハでチェコ・フィルハーモニー管弦楽団とジルベスターコンサートで共演。その後も1996年スペイン、1998年プラハでリサイタルを開催し、プラハではヨセフ・スーク&スーク室内オーケストラと共演した。2006年にデビュー20周年を迎え、同年11月にはウィーン・フィルのメンバーと共演。2010年1月には、エジプトにて、カイロ・オペラ・オーケストラと共演、アレクサンドリア(エジプト)、アンマン(ヨルダン)ではリサイタルを開催。 CDはキングレコードより多数リリースされており、2006年モンポウの作品集「静かな音楽」、2009年にはダンスをテーマにした「Shall We Dance?」をリリース。自身執筆によるエッセイ集はショパンより4冊、2008年には講談社から「人生を幸福にしてくれるピアノの話」を発売。2008年4月、大阪芸術大学(演奏学科)教授に就任。テレビ・ラジオへの出演、執筆活動など多才な活躍で幅広いファンを獲得している。 ●熊本マリ・オフィシャルサイト●ブログ |
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