皮膚老化について
「アンチエイジングの専門家がナビゲート」(ガイド:塩谷信幸)
これは、1月19日のHealth&Beauty Reviewサービス開始記念講演会「見た目のアンチエイジング」の要旨である。
皆さんはアンチエイジングに関してどのような悩みをお持ちだろうか。
以前、メルマガ会員のうち1000人にアンケート調査を行った。
結果は、見た目に関する悩みが7割を超えていた。
1位が「顔の老化」―シミ・皺・たるみ
今回は、皮膚の老化について見ていきたい。
皮膚の老化の4大原理
1.紫外線による光老化
2.フリーラジカルによる細胞の酸化
3.皮膚の乾燥
4.真皮が薄くなる
左の写真をご覧いただきたい。紫外線による光老化の例である。
2人とも60代女性。左は尼さん。右は農家のかみさん。
紫外線に当たるか当たらないかでこれだけ違いがある。
皮膚の老化の8割は日光の光線によるもの。
といっても、紫外線を避けるために外の活動をカットするなんてできない。紫外線の影響がこれほど明らかだということがおわかりいただければ、紫外線対策の重要性もわかっていただけるだろう。
ここで、皮膚の構造について説明しよう。
皮膚から骨までの組織は5層になっている。
上から、表皮・真皮・皮下組織・筋膜・筋肉。
表皮と真皮が皮膚。皮下組織はほとんどが脂肪。
筋膜は筋肉を包む膜。顔のたるみをとるとき、この筋膜を釣り上げることで筋肉のたるみをとる。
持続性を保つために筋膜は注目されているのだ。
表皮の真皮に接するところに基底細胞があり、これが分裂する。最近流行りの再生医療である。
最近の研究で、表皮細胞は単なる防御膜ではなく感覚器であることがわかった。だから、マッサージも筋肉だけでなく表皮にも受容体を持っていて反応し若返るのだ。
真皮は、バリア機能で表皮を支える支持組織。この8割は、コラーゲンである。
老化と関わりのある皮下組織は、2つある。
1つは、リンパが鬱滞して長く溜まると線維化してしこりになる。もう1つは、たるんでくると脂肪の位置が変わり容貌の変化が起こる。
次にフリーラジカルによる細胞の酸化について-
フリーラジカルとは、活性酸素つまりサビである。
紫外線の影響の他、喫煙・ストレス・食生活・加齢とともにサビは溜まってくる。
このサビを抜くのがデトックスである。
喫煙だけはいつも強調するんだが、もしタバコを吸っている方がいらっしゃるなら今日限りでやめていただきたい。百害あって一利なしだ。
老化の場合、表皮や真皮が薄くなりホルモンの関係で20歳代から皮脂の分泌量が減ってくる。そうすると、細胞間隙が広がり保湿力が少なくなる。水分が失われ皮膚が乾燥し悪循環が発生するというわけだ。
では、この皮膚老化をどのようにアンチエイジングしたらよいのか…
皮膚のアンチエイジングには、以下のような手法が用いられる。
1.化粧品を使用したスキンケア
2.スキンリサーフィシング
ケミカルピール
レーザーピール
マイクロアプレーション
3.皺取りの手術
4.ヒアルロン酸、コラーゲン
5.ボトックス
◇皺取りの手術◇
皺取りの手術は、実は1世紀前から行われている若返りの方法である。
右の絵のように、耳の回りを切って皮を剥がし、たるんだ分だけ取って釣り上げる。
◇ケミカルピール◇
化学物質で肌を焼く。トリクロ酢酸やフルーツ酢酸を使用する。
効果はあるが、日本人の場合ケロイドの跡を残したり色素脱出を起こしたりすることがある。実際に皮膚がはがれるわけではなく、引き締まりの効果が期待できる。小皺、シミ、ニキビに良い。
◇ボトックス◇
ボツリヌス菌という食中毒のばい菌が出す神経力を筋肉に注射させることで、筋肉を麻痺させ筋肉によってできる皺を解消する。効果は、半年くらいである。
最後にこの写真をご覧いただきたい。手術前と後の写真である。
左が前で、右が後。
これを見て鋭い人ならインチキだという声が上がりそうだ。
手術後の写真は、化粧もしてカツラも被っている。そう、化粧だけでもこうれだけ変わるのだ。だが、あごなどのたるみは化粧ではどうにもならない。その意味で、手術は存在意義がある。
手術というのは、化粧やエステや髪型すべて試してもここだけは変えられないというときの最終手段にしたい、と私は考えている。
筆者の紹介
塩谷 信幸(しおや のぶゆき)
NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長、北里大学名誉教授
東京大学医学部卒業。フルブライト留学生として渡米し、オルバニー大学で外科および形成外科の専門医資格を取得。帰国後、東京大学形成外科、横浜市立大学形成外科講師を経て、北里大学形成外科教授、同大学名誉教授。 現在、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療と研究に従事。日本形成外科学会名誉会員、日本美容外科学会名誉会員として形成外科、美容外科の発展の尽力するかたわら、NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長、日本抗加齢医学会顧問としてアンチエイジングの啓蒙活動を行なっている。
【著書】
「お若いですね」と言わせよう。(ゴルフダイジェスト社) 他多数
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