アルツハイマー痴呆の人はがんになりにくい。また、がんの人はアルツハイマーになりにくい
「アルツハイマー痴呆の人はがんになりにくい。
また、がんの人はアルツハイマーになりにくい」
――ハセ博士のヘルシー情報最前線(228)
アルツハイマー痴呆もがんも、どちらも出来るだけなりたくないものですよね。
両方をいっぺんに患ったらと思うと、そら恐ろしくなります。
そこでアルツハイマー痴呆の患者さんはがんになりにくく、また、がん患者さんはアルツハイマー痴呆になりにくいという話題をお送りします。
これは、米国セントルイスにあるワシントン大学医学部のCatherine M. Roe博士らが、米国神経学アカデミー誌Neurology(December 23, 2009)に報告したものです。
研究では65歳以上の3,020人を対象に、痴呆症の発症の頻度について平均5年間の追跡調査を行い、またがんの発症頻度を8年間の追跡調査にて調べました。
なお、この研究の開始時では、164名(5.4%)が既にアルツハイマー痴呆を発症しており、また522名(17.3%)ががんと診断されていたそうです。
そして、その後の研究期間中には、478名が痴呆症を、376名が新しくがんと診断されました。
次にこれらの結果を詳しく分析したところ、既にアルツハイマー痴呆を発症している人では、アルツハイマーではなかった人に比較して、がんが起こる頻度が69%低下していることが明らかになりました。
また同様に、研究開始時にがんを発症していた人では、アルツハイマーになるリスクは、がんでない人に比べて、43%低下していることがわかりました。
なおこのような現象は白人にのみあてはまるもので、他の少数派の人種では観察されず、少数派人種では、がんの人はアルツハイマー痴呆になりやすかったとされています。
しかし、実際のところは、少数派の人に関する結果については、統計的に症例数が少なすぎるのであまりあてにはならないようですが・・・。
いずれにせよ、全体としては「アルツハイマー痴呆の人はがんになりにくい。また、がんの人はアルツハイマーになりにくい」ことを示しています。
そしてこの結果はがんとアルツハイマー痴呆のような脳障害とが、お互いに共通の分子機構により発症しているという説を支持するものだそうです。
なお今回の結果によると(アルツハイマー痴呆とは異なる機構で発症する)脳血管性痴呆では、がん発症との間にはなんら関連が見られなかったとされています。
今後、発がんとアルツハイマー痴呆の発症とにどのような関係があるのか、またどのような種類のがんでその関係が強いのかを調べる予定とのことです。
ということですので、がんとアルツハイマー痴呆は同時にならないようです。”どちらかを選べ”といわれたら、難しい問題ですが・・・。
ハセ博士=薬学博士。国立大薬学部や米国の州立大医学部などで研究や教官歴がある。現在は製薬企業で研究に従事している。
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