アンチエイジングニュース

『日本抗加齢医学会 アップデート&レビュー』
坪田一男氏(慶應義塾大学医学部眼科学教室教授・日本抗加齢医学会広報委員会委員長)

坪田一男教授4月26日(火)、六本木ヒルズにて日本抗加齢医学会主催でマスコミを対象としたアンチエイジング医学の「エデュケーショナルセミナー」が開催された。3月11日の震災後初めて開催されたこともあり、被災地や放射線対策といった震災に関係する内容も取りあげられた。
前回同様司会を務めた坪田一男(慶應義塾大学医学部)教授によるアップデート&レビューでは、今回の震災直後に坪田教授が発起した活動である「Mission Vision Van」についての報告があった。「Mission Vision Van」とは坪田教授が、マイアミ大学の眼科医エドアルド・アルフォンソ氏に依頼して緊急輸入した移動式眼科診療バスである。今回の震災に際し、「一医師として何かしたい」と強く感じた坪田教授は、ハリケーンカトリーナの打撃を受けたルイジアナ州で、多くの眼疾患を救ったこのバスのことを思い出し、もとより親交の深かったアルフォンソ氏に相談した結果、無償提供の支援を受けたそうである。今後3ヶ月間、岩手・仙台の被災地を循環して診療をするとのことで詳しい診療スケジュールなどはホームページを参考にしてほしい。

『コエンザイムQ10の今』
山本順寛氏(東京工科大学応用生物学部学部長・日本抗加齢医学会理事)

山本順寛先生次の山本順寛(東京工科大学)先生の講義では、まず生物学の観点から放射線の影響について説明があった。
放射線による人体への影響として危惧されていることは、DNA自体を傷つけることと、DNAを傷つける活性酸素を大量発生させてしまうことにあるという。しかしそれらの影響が出るとされているのは、一気に多量の放射線を浴びた場合に限られており、今回の原発事故に関しては影響ないとされるレベルとのことである。
さらに、ヒトが呼吸すれば、必ず放射線を浴びたときと同じく活性酸素を生じさせるものであり「生きることは放射線を浴びるのと同じようなこと」で放射線の影響を心配しすぎる必要はないとまとめた。
続けて本題であるコエンザイムQ10についての講演が始まった。コエンザイムQ10とはそもそも、生物のエネルギー源であるATP合成に欠かせない、体をスムーズに動かすための潤滑油のような働きをする抗酸化物質である。
コエンザイムQ10は美肌や心臓機能回復、肥満改善などの効果があるとしてサプリメント等を通じて世の中に広く名前が浸透してはいるものの、摂取した後の吸収や各臓器への輸送のメカニズムについて今まで解明されていなかった。しかし近年、山本氏の研究の結果、サポシンBというタンパク質が関係していることが分かってきたそうだ。
さらに、鶴見大学歯学部の斎藤一郎教授との共同研究で、コエンザイムQ10を摂取すると唾液の分泌が促進され、ドライマウスが改善するという結果が報告されたそうだ。
多くの疾患に対する予防効果が期待できそうなコエンザイムQ10について、今後もメカニズム解明が進み、新たな効果、効能などが発見されると思う。アンチエイジングに関わる物質としてますます注目できそうだ。

『第11回日本抗加齢医学会総会トピック』
木下茂氏(京都府立医科大学眼科学教室教授・日本抗加齢医学会理事)

木下茂先生最後に第11回日本抗加齢医学会総会の学会長を務める木下茂(京都府立医科大学)教授の講義があった。

まずは眼科医の立場から、今回の原発事故に関連した内容に触れられた。木下教授によると、放射線の影響による白内障の発症はまだ報告されていないが、万が一発症したとしても、手術で確実に治療できるので心配はないとのことだ。
また、加齢に伴う様々な眼疾患についての解説があったので、下記にその特徴や対処法を紹介する。
●加齢黄斑変性(AMP)
日本における中途失明の原因の約4%を占めている。日本人に多い滲出型加齢黄斑変性は新生血管の発生に起因している。進行が早いが、抗血管内皮増殖因子(VEGF)剤を眼球内の組織である硝子体に投与することで、新生血管の縮小や視力改善などがみられるそうだ。また予防対策として普段からビタミンA、C、Eやルテイン、ゼアキサンチンといった抗酸化物質を摂取するよう心がけることが大事だという。
●緑内障
緑内障は日本人の40代では5%が、70代になると有病率が10%にまで上昇するとされる。症状が末期まで進行した場合、元の状態に戻ることはないので定期的な健診や予防を心がけた方がよいとのことだ。
●白内障
加齢に伴い、水晶体を構成するタンパク質が変性することで発症するのが白内障だ。変性してしまった箇所を取り除き、眼内レンズを取り換えることで視力が回復するそうだ。
また眼内レンズについても、遠方に焦点を合わせるタイプや近方・遠方ともに焦点の合うタイプなど、その人に合わせて様々な種類が選べるようになっている。
●結膜弛緩症
加齢とともに、眼球前部の表面を覆っている結膜がたるみ、下まぶたの縁を部分的にかぶさってしまう病態で、違和感やドライアイを生じるそうだ。しかし外科手術により患部の切除をすれば、患者にとって軽快可能なうえ、美容面でも大きく喜ばれるとのことだ。

心配な眼疾患症状があったら早めに医療機関を受診していただきたい。
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第11回日本抗加齢医学会総会 市民公開講座
「あなたの常識を覆す!食べてキレイになるコツとアンチエイジング」

日本抗加齢医学会会期中に豪華キャストによる市民公開講座が予定されているので、興味のある方は参加してみてはいかがだろうか。
【日時】2011年5月29日(日)14:00-17:00(受付:13:00)
【場所】同志社大学室町キャンパス 寒梅館ハーディーホール
   (市営地下鉄烏丸線今出川駅下車)
【参加費】無料
【定員】600名
【参加方法】参加ご希望の方は当日直接会場にご来場ください。
詳細はこちら!

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