夏バテ防止の活力源
梅雨が明ければ、私の大好きな季節”夏”本番です。
ピリッと辛さのある料理や熱々の料理で汗をかきながら食べるのが私の定番。
そんなフードアナリスト伊能すみ子が、日本の四季を感じる旬な美食スタイルをお送りいたします。
この時期になると、テレビや新聞で話題となるのが鰻ではないでしょうか。
鰻屋さんの前を通ると、香ばしく焼き上がる鰻の香りに思わず鼻が喜んでしまうほど。
江戸前の代表格である鰻の魅力は夏の暑さなくては語れません。
***発明家平賀源内は名コピーライター?!***
『万葉集』の中に”夏痩せには、鰻を食べる・・・”という意味合いを持つ歌があるほど、鰻の強壮効果は遥か昔から認識されていたものでした。
体を改善するための健康法である薬喰いとしての役割がありましたが、江戸時代のはじめまでは、脂のしつこさから下等な食べ物とされ、日常の素材としては人気がありませんでした。
そんな、薬喰いの鰻をどうにか一般に浸透させたいと、鰻屋の主人が、発明家である平賀源内に相談し、「本日、土用の丑の日」という張り紙を出したところ、大盛況になったといわれています。(諸説ある中のひとつ)
今夏の土用の丑の日は、7月21日と8月2日。
土用とは立春、立夏、立秋、立冬の前の18日間のことで、その中の十二支の丑の日を”土用の丑の日”と呼びます。その年にもよりますが、順番に暦に当てはめていくと、年に約6回の土用の丑の日があるのには、ちょっと驚きですね。
***アンチエイジングは粘膜強化から***
照りつける太陽に食欲減退…夏バテ防止の代名詞となっている鰻のパワーは絶大です。暑さから偏った食生活を送ってしまうと、体のダメージが大きくなりますね。
鰻に含まれるビタミンAは、口の粘膜から出てくる唾液によって、殺菌作用が活発になるので、病原体をブロックしてくれます。食べものの吸収を促す腸の粘膜を覆う細胞の合成の助っ人にもなって、免疫力の維持にもつながるのです。
また、ビタミンB2には目の粘膜を正常に保ってくれるので、目を酷使して、潤いがない時にも役立ってくれるでしょう。
粘膜は、薄くてデリケートなので、常に意識しておきたいものですね。
***すみ子のちょこっとZOOM UP***
鰻の蒲焼きに欠かせない薬味といったら、山椒ですよね。
ミカン科の植物で、爽やかな香りがとても良いですし、ピリッとした刺激が食欲増進にもなります。初夏になると、生の山椒の実が出回ってきますし、新芽などは日本料理のアクセントとして頻繁に使われています。
乾燥させた山椒を粉末にして鰻にかけますが、これは爽やかな山椒がこってりした鰻の蒲焼きの味を引き立ててくれるからなのです。また、胃酸に作用して、鰻の消化も助けてくれるので、この組み合わせは相性ばっちり!
せっかく買った粉山椒も鰻だけだと余りがちになってしまいますが、他の焼き魚や煮魚にパラッとかけてもいいですし、野菜の煮物にも合いますよ。
体に潤いを与えてくれる鰻。
今年の土用の丑の日が楽しみになってきたのではないでしょうか。
伊能 すみ子
INOU SUMIKO
食の専門家であるフードアナリスト1級。
気象番組ディレクターを経て、日本をはじめ世界各国の料理や食文化を学ぶ。
エスニック、スイーツを中心に、様々な食の情報をテレビ、雑誌、ウェブなどのメディアにて提案、執筆。
自らのアンチエイジングフードのポイントは「スパイス」。
古代エジプトより薬として活用されたスパイスをこよなく愛する。
●ブログ『恋しいアジア』~アジアンフードディレクター伊能 すみ子~更新中
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