秋は旬の味覚が盛りだくさん~きのこ編~
9月を過ぎると、ほおに当たる風が涼しげな風に変わってきたなと実感します。
そして、鼻に抜ける食への香りも一層豊かになって、私の心は一気にテンションが上がっていきます。
このところスーパーの生鮮野菜のコーナーの彩りが変わってきたな、とお思いの方いらっしゃるのではないでしょうか。
そう、季節は秋。”食欲の秋”、”味覚の秋”はもちろん、”行楽の秋”、”芸術の秋”、”読書の秋”と、五感や心の源を刺激する季節がやってきました!
アンチエイジングを通して、食をあらゆる視点から注目するフードアナリストの伊能すみ子が、お送りする「美食スタイル」。今回から数回にわたって、”秋”をテーマにお送りしていきたいと思います。
最初のテーマは、“味覚の秋・きのこ”です。
***味覚の王様の出番です***
きのこは通年を通して、購入できる便利な野菜です。
しかし、きのこ狩りなど、秋に注目されるのはなぜでしょうか。
ひとつに「香り松茸、味しめじ」というように、秋を象徴する松茸が旬を迎えるからといえるでしょう。人工栽培が難しく、アカマツなど特定の林の下、さらに乾燥気味の大地でしか生育しない松茸は、とてもデリケートであり、貴重な秋の味覚の王様です。
手に取っただけでも、香りの良さが鼻を抜けていき、肉質も引き締まっていて、歯ごたえの良さは、王様ならでは!
2010年は天候不順によって、国内産の松茸は不作となり、99%を輸入に頼ることとなりました。値段が手ごろな、中国産や韓国産に、最近ではカナダ産も多くみられるようになっています。
今年も猛暑が続き、松茸の生育に影響を及ぼしているので、ますます国内産が遠い存在になってしまいそうですね。
また、「…味しめじ」は、“本しめじ”のこと。
私たちが通年みかけるのは、ぶなしめじという品種で、本しめじと似ていますが、別の品種なのです。
本しめじは香りが高く、太い軸でしっかりしています。その特徴を活かした種類に“大黒しめじ”があり、近年注目を浴びているきのこのひとつといえるでしょう。
網焼きにすると、香りがふんわりと広がっていき、味わいも凝縮されて、秋の夜長がさらに楽しくなりますよ。
***超ローカロリーで女性に人気***
きのこの中でも身近な存在といえば、椎茸でしょう。
生の椎茸はもちろん、乾燥椎茸は昔から出汁をとるにも重宝される、日本の代表きのこでもあります。
全国で菌床栽培されていて、通年出回っていますが、旬の素材として、またきのこ狩りで楽しむ時には、原木を利用した原木栽培から生育する椎茸が最高です。
春に”しいたけ菌”を原木に仕込んで、秋までに自然生育させます。
きのこ狩りで、いくつもの”ほだ木”から椎茸が、にょきにょきと生えている姿を見たことのある方も多いのではないでしょうか。
また、落葉樹の中を散策して、天然きのこを探し出すのも楽しいものです。
なめこ、えのきたけ、まいたけ・・・普段スーパーでみかけるものとは、香りも味わいも違い、自然の恵みの良さを感じることができます。
きのこは、品種も形もさまざま。焼いたり、蒸したりと調理の幅もレパートリーも豊富です。野菜の中でも、ダントツにエネルギーが低く、カロリーを気にせずに食べられるのも嬉しいところです。特に生の状態で100gに対して14kcalという魅力的な数字をもつのが本しめじです。食事の面からも味覚の秋の本領発揮といえそうですね。
また栄養素からも認識が高いのが食物繊維が豊富ということでしょう。
きのこ類には、不溶性食物繊維が多く含まれています。腸の働きを活発にしてくれて、有害物質の排出を促してくれるすぐれもの。1日の摂取量の目安としては、30代~60代の女性で17~18g。70代以上の女性では、15gとなっています。
肉質がしっかりしていて、歯ごたえもあり、口の中で噛む回数も増えることから脳細胞を活発にしてくれます。消化に時間がかかるので、咀嚼が多ければその分、消化を潤滑にしてくれるでしょう
女性に多くみられる骨粗しょう症には、ビタミンDを多く含む椎茸や”きくらげ”がおすすめです。使用する前に日光に少しの時間当てるだけで、その働きはよくなり、骨を丈夫にする手助けをしてくれます。
***すみ子のちょこっとZOOM UP***
きのこ類は、和洋中と様々な料理に使われる優秀な食材。
みなさんはどんな料理に使っていますか?
いろいろなきのこを合わせて、炒め物にする、なんて方もいるかしら。
でも、ちょっと待って下さいね。
きのこ類は、オリーブオイルやバターとの相性がとってもいいのですが、
反面、油脂分を吸収しやすい性質をもっています。
また、ちょっとシェイプアップを・・・と思って、きのこサラダを作ったとしても
オイルの入ったドレッシングをたっぷりかけてしまっては、せっかくのローカロリーもハイカロリーに一気にアップしてしまいます。
注:油と合わせることで、ビタミンDの吸収率は高まりますので、適量の使用をお願いいたします。
香り高い旬のきのこを楽しむために、網焼きにしてはいかがでしょうか。
きのこ本来の香りに、ちょっと焦がした風味をプラスするだけでも、贅沢な食卓と
なるのではないでしょうか。
焼いたきのこに、レモンなどの柑橘を絞れば、さっぱりといただけます。
きのこのビタミンB1とレモンのビタミンCを合わせることで、免疫力の向上にもなるでしょう。
国内産のきのこはもちろん、最近多くみられるようになったヨーロッパのきのこ類も旬を迎え、食材の宝庫である秋。きのこの特徴あるうま味を堪能してみてくださいね。
伊能 すみ子
INOU SUMIKO
食の専門家であるフードアナリスト1級。
気象番組ディレクターを経て、日本をはじめ世界各国の料理や食文化を学ぶ。
エスニック、スイーツを中心に、様々な食の情報をテレビ、雑誌、ウェブなどのメディアにて提案、執筆。
自らのアンチエイジングフードのポイントは「スパイス」。
古代エジプトより薬として活用されたスパイスをこよなく愛する。
●ブログ『恋しいアジア』~アジアンフードディレクター伊能 すみ子~更新中
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