アンチエイジングニュース

「皮膚がんの薬が、アルツハイマーに効果」
――ハセ博士のヘルシー情報最前線(320)

新薬が偶然発見されることがよくあります。

発毛剤が、思いもかけぬ勃起障害の治療薬になることが発見されたのはよく知られていますよね(ご存知バイアグラ)。

そこで今日は、皮膚がんの治療薬がアルツハイマーの治療薬になるかもしれないというお話をご紹介します。

先日、皮膚がんの治療薬をアルツハイマー病のマウスに投与したところ、症状が急激に改善することが偶然に発見されました(CNNニュース2012年2月11日付)。

米国ケース・ウェスタン・リザーブ大学の研究者らが、皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)と呼ばれる皮膚がんの治療薬ベキサロテンを、たまたまアルツハイマー病のマウスに投与したそうです。

すると、投与されたマウスの記憶力が72時間以内に劇的に改善することが分かりました。

また、アルツハイマー病患者さんの脳にはアミロイドベータと呼ばれる物質が大量に蓄積していることが分かっていますが、この薬を投与されたアルツハイマー病マウスでは、アミロイドベータの値が大幅に低下しており、同時にアミロイドベータの分解を助けるアポリポタンパクEの値が上昇していることも明らかになりました。

ちなみに、この薬ベキサロテンはすでに米食品医薬品局(FDA)の認可を受けているものですので、臨床試験を早期に実施することが可能です。

研究者によると、今後2カ月以内にベキサロテンを健康な人で試し、マウスの場合と同様の効果があるか見極める研究に入るそうです。

鉄の女と呼ばれた英国元首相のサッチャーさんの映画が近く封切りになりますが、彼女もアルツハイマー病と戦っています。

このアルツハイマー性痴呆は、高齢化社会の訪れで、今後益々重大な疾患となりますので、一刻も早く、画期的な新薬の登場が期待されます。

ハセ博士=薬学博士。国立大薬学部や米国の州立大医学部などで研究や教官歴がある。

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