アンチエイジング医学最先端!2012
日本抗加齢医学会 エデュケーショナルセミナー
アンチエイジング医学最先端!2012
2月21日、六本木ヒルズにて日本抗加齢医学会主催のマスコミ向けセミナーが開催された。
★学会アップデート&レビュー
はじめに司会を務める坪田一男先生(慶応義塾大学医学部眼科学教室教授)による学会アップデート&レビューで会の幕を上げた。
長寿に関連する遺伝子として有名なサーチュイン遺伝子の作用について、何点かの最新情報が報告された。 まず「脳内に活性したサーチュインを高めると不安感が高まる」という情報について、坪田先生の見解によると、生命維持のために危険が高まるとサーチュインが活性化する為、その相関作用ではないかとのことだった。
また、サーチュイン遺伝子と寿命の関係の有無についてはこれまで議論の対象となってきていたが、数あるサーチュイン遺伝子のうちSirt6が寿命に関係があることが確認されたとの報告があった。
★皮膚とアンチエイジング
山田秀和先生
(近畿大学アンチエイジングセンター/医学部奈良病院皮膚科 教授・日本抗加齢医学会 理事)
山田先生からは「皮膚とアンチエイジング」についての講義。 まず、ミトコンドリアやテロメア、長寿と遺伝の関係といった老化の仕組みについて前置きがあった上で、アンチエイジングについて次の3つについて解説された。
(1)見た目が老けていると寿命も短い
(2)表現型の重要性
(3)ダーマトポローシス 皮膚粗しょう症
「見た目と寿命の関係」は双子の研究によりその報告がされているとのことだ。表現型の重要性については、人種など遺伝子で予め決まっているものと、そうでないエピジェネティックな遺伝が関与するものがあるということだ。エピジェネティックとは、簡単にいえばDNAの配列とは別に、遺伝子の発現を制御する現象のこと。これは親が受けたストレスが4代先まで遺伝するということがショウジョウバエの実験で明らかになっている。
また真皮層にあるコラーゲンが減少し、スカスカになった状態のことを「皮膚粗しょう症」とし、予防法として紫外線対策が重要であることや、紫外線を避ける代わりにビタミンDを食事から摂取することなどが勧められた。
そして最後に「見た目のアンチエイジング対策」として、「運動・食事・心」の3つが重要であるとした。
★毛髪とアンチエイジング
板見智先生
(大阪大学大学院医学系研究科皮膚・毛髪再生医学寄附講座 教授
日本抗加齢医学会 評議員)
初めに、男性型脱毛症の原因として「ストレス」や「頭皮の脂」などといった俗説について、科学的根拠がないとし、基本的には遺伝と男性ホルモンに原因があるとした。
また女性型脱毛症については、日本よりも欧米の罹患者の進行度の方がより深刻であり、更年期以降に発症することが多く、男性とは違いM字型にはならないことなどを特徴として挙げた。
そして治療法としてフィナステリドやミノキシジルといった現在一般的に使用されている薬の他に、現在研究が進められている薄毛治療について紹介がされた。
まずは「LEDライト」である。背部を剃毛したマウスに赤色LEDを照射する実験で、対象群と比較して発毛に明らかな差異が生じたという。研究の結果、赤色LED照射によって、ヒト毛乳頭細胞はHGFやレプチンといった細胞成長因子を産生することが明らかになったという。
次に紹介されたのは「毛包単位移植」。これは男性ホルモン感受性のない後頭部の毛包を患部に移植する方法で、効果ははっきりと表れるが、10,000本が限界であるため、再生医療の発展が期待されるという。
講義終了後も、司会者である坪田先生と講師のディスカッションが行われ、見た目のエイジングの評価基準やサーチュイン遺伝子とエイジングの因果関係についてなど、熱い議論が交わされた。特にLEDライトに関して話が大きく膨らんだ。今回の板見先生の講義では赤色LEDによる効果が報告されたが、緑色は創傷治癒、青色はニキビといったように、照射する色によって期待される効果が違うとのこと。
次のセミナーは5月末に開催されるとのこと。次回はどんな最新情報がアップデートされるのか、ますます楽しみである。
(AAN WEB編集部・小田真弓)
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