旬野菜で春の目覚めにお役立て(1)
日々、外の空気は春本番へ…
暖かくなってきましたし、桜(ソメイヨシノ)の開花や満開の便りも届くようになりましたね。
みなさんの地域の桜はどうでしょうか。
さて、私は花粉症と戦いながらも、どこにお花見に行こうかしら!
暖かくなるに従い、ポカポカ陽気に眠くなったり、体がだるく感じたりすることはありませんか?
今の季節は、一般的に生活環境が変わる時期ですし、気温変動も大きいので、その変化に体がついていけない場合があります。
春は、野菜も新しい季節の芽吹きを感じることができるので、たくさん食べて、体の中からも気分を切り替えてアンチエイジングしちゃいましょう。
***「湯を沸かしてから掘りに行け」***
春野菜といったら、何を思い浮かべるでしょうか。
眠っていた大地を揺り起こすかのように、力強く地上に顔を出す野菜たち。
その力強さは、私たちの活力源にもつながります。
ご紹介するのは「筍」です。
一般的に出回っているのは孟宗竹。中国の江南地方から1736年に鹿児島県薩摩地方へと伝来したともいわれています。(諸説あり)
竹林の中にちょこんと顔を出す筍は、一日に10cm以上も伸びることもあるので成長がとても早く、新鮮さが大事な野菜です。
一旬(10日)で成長しきってしまうだけあって、「竹」と「旬」という文字を合わせた「筍」に納得ですね。
掘り出してすぐの筍は、アクを気にすることなく、そのまま刺身で食べられるほど新鮮です。しかし、時間が経つほどにエグミが強くなるため、茹でるなどの処理が必要となります。湯が沸くのを待っている時間もないくらい鮮度が命というわけですね。
筍のアクの正体は、シュウ酸やホモゲンチジン酸といった酸。
それを取り除くために、茹でる時は、米のとぎ汁や米ぬかなどを入れて、酸を中和させていきます。
ちょっと余談ですが、米ぬかに含まれる成分にフェルラ酸とγ-オリザノールという、ちょっと聞きなれない成分があります。この2つにはそれぞれ、コレステロールの吸収を抑えたり、酸化防止の機能があったり、紫外線防止として化粧品にも使われているそうですよ。
***筍は女性の味方***
筍を食べると、トウモロコシに似た味わいを感じると思いませんか?
私は、筍を食べるたびにそう思っていたのですが、共にイネ科の植物なんですね。茎には節があって、そこから葉が伸びるのが特徴です。皮に包みこまれた形状も似ていますね。栄養素成分にも共通点が多く、注目するのが食物繊維です。
筍は、水に溶けない不溶性食物繊維であるセルロースが豊富に含まれていて、腸の中で水分を吸収することで、ぜんどう運動を活発にしてくれます。ぜんどう運動は、消化されたものを肛門まで移動させる働きなので、この動きがスムーズにいかないと、便秘の原因となってしまいます。また、腸内の有害物質の排出も促進してくれるのも嬉しいところ。
他にも、カリウムや亜鉛などのミネラルが多く、茹でると消失しやすいのですが、筍にいたってはカリウムの損失が少ないのが特徴です。体内の水分調整によって、むくみの解消や高血圧の予防にも役立ってくれるでしょう。
筍は水煮になった状態で、一年中食べることができますが、春野菜の代表格でもあります。ホクホクとした甘みとシャキシャキ感は、今の時期ならではなので、手間を惜しまずに楽しみましょう!
***すみ子のちょこっとZOOM UP***
さて、筍が手に入ったら、どんな料理を作りましょうか。
私は若竹煮をよく作ります。
筍とワカメは「春先の出会いもの」といわれていて、相性抜群ですよ。
先ほど、筍には不溶性食物繊維が含まれていると書きましたが、対して、ワカメには水溶性食物繊維のアルギン酸が含まれています。特有のぬめりはアルギン酸によるもので、筍の繊維質を柔らかくしてくれる役目も果たしているのです。
ワカメは海藻類なのでミネラルも豊富。この2つの食材を合わせることで、動脈硬化の予防にもつながっています。
筍の美味しさには、グルタミン酸が隠れているので、出汁のイノシン酸と合わせれば、うま味の相乗効果が生まれるでしょう。
食材の組み合わせは、昔からの食の知恵がたくさん詰まっていますね。
伊能 すみ子
INOU SUMIKO
食の専門家であるフードアナリスト1級。
気象番組ディレクターを経て、日本をはじめ世界各国の料理や食文化を学ぶ。
エスニック、スイーツを中心に、様々な食の情報をテレビ、雑誌、ウェブなどのメディアにて提案、執筆。
自らのアンチエイジングフードのポイントは「スパイス」。
古代エジプトより薬として活用されたスパイスをこよなく愛する。
●ブログ『恋しいアジア』~アジアンフードディレクター伊能 すみ子~更新中
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