第1回 ブルーライト研究会(1)
5月26日、大手町ファーストスクウェアにて第1回目となるブルーライト研究会が行われた。
ブルーライトとは、可視光線の中でも最もエネルギーが高く、眼の角膜や水晶体で吸収されずに網膜まで到達する青い波長の光。近年普及しているLEDやスマートフォンなどにはこのブルーライトが多く含まれている。もちろん今あなたがご覧になっているパソコンも例外ではない。
長時間パソコン、スマートフォンなどの光を人工的な明るい室内で長時間浴び続けているライフスタイルは人類の長い歴史の中でも未だかつて経験がなく、人体に対する様々な影響が懸念されている。たとえば眼精疲労や不定愁訴、頭痛に発展する恐れ、さらにサーカディアン(生体)リズムが狂うことも危惧されている。
こうした背景から眼科医を中心に立ち上がったブルーライト研究会。まずは世話人代表である坪田一男先生(慶應大学医学部眼科学教室 教授)の挨拶で幕を開け、各方面から招かれた専門家たちの見解を聴くことができた。
≫青色光の「にじみ」「散乱」「高エネルギー」といった特徴が眼精疲労へ
「ブルーライトと眼精疲労について」
井出 武 先生(南青山アイクリニック東京 副院長)
井出先生からは臨床医の立場としてブルーライトと眼精疲労についてお話頂いた。まずVDT作業(一般的にパソコンを用いた作業を指す)において時間も人口も増加していること、あらゆるコンテンツがアナログからデジタルへ、TVモニターもブラウン管から液晶へと移行しているといった背景について言及。
デジタルの世界においては、紙で出力したものに比べ、情報に“にじみ”が見られる。またTVモニターもブラウン管に比べ、液晶の方が、より青色成分が多く含まれている。この青色成分の特性について、スキムミルクを入れた筒の中に光を通す実験写真を介し、赤色光はスキムミルク内をまっすぐ通過するのに対し、青色は散乱していると述べた。これらのことから、青色光は赤色光に比べ、散乱しやすく、にじみやすい、そして高エネルギーをもつ特性があり、これが眼精疲労を引き起こす可能性がある、とのこと。また視細胞からの刺激をなくして光を感受するmRGC細胞が青色光に反応し、睡眠に関連の強いホルモン、メラトニンの産生を抑制するというデータから、サーカディアンリズムへの影響も示唆した。
この青色光を避けるために、補色関係にある黄色のレンズを使用したメガネを装着した実験結果では多くの被験者が眼精疲労を感じなくなったという研究結果も明らかにした。しかしこのメガネについて、客観的データが不足していること、社会的コンセンサスが得られるかどうか(就業時の装着が認められるかなど)といった問題のほか、ブルーライト自体は集中力を高める効果もあるという事実も考慮すべきといった問題点を挙げた。
≫白内障患者の睡眠障害やうつ傾向を白内障眼内レンズが解消
「白内障患者の睡眠とブルーライトについて」
綾木 雅彦 先生(国際医療福祉大学三田病院眼科 准教授)
綾木先生からは白内障と睡眠、ブルーライトの関係性についての研究報告がされた。
白内障とは水晶体が濁り、物がかすんだりぼやけたりする症状をもつ疾患であるが、白内障により水晶体の着色が進行した場合、そうした症状のみならず光(特に青色光)の透過率が下がるとのことである。光は人体に対し、睡眠に関わるホルモンであるメラトニンの分泌に影響を及ぼすが、この作用は昼夜で異なる。昼間に光を曝露すると、昼間のメラトニン分泌を抑制し、夜間のメラトニン分泌を促進する。夜間における作用はこれの逆である。これらのことから、光を感受しづらい白内障患者は睡眠障害を発生しやすい傾向があり、さらに睡眠障害を発症した場合、生活の質が低下することでうつ傾向にあると考えられるという。そこで白内障眼内レンズによって睡眠障害が改善するかどうかについて実際の症例を用いて検証した結果、57%の患者が改善したとのこと。それも障害の度数が大きければ大きいほど改善したと報告された。しかし青色光とサーカディアンリズムの関連性については今後詳細に検討していくという。
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