アンチエイジングニュース

「宇宙で生活すると、寿命が延びる」
――ハセ博士のヘルシー情報最前線(367)

先日、北朝鮮の前の総書記金正日が長寿研究所を作って不老長寿の方法を探っていたとのニュースがありましたが、レッキとした日本の研究所は「宇宙では老化が遅くなって寿命が延びる」可能性を報告しています。

これは、東京都健康長寿医療センター研究所や宇宙航空研究開発機構、東北大、鳥取大から成る合同研究チームが、2012年7月5日号の英科学誌サイエンティフィック・リポーツ誌に報告したものです。
(論文タイトル:Genes down-regulated in spaceflight are involved in the control of longevity in Caenorhabditis elegans 著者:Yoko Honda他 Scientific Reports 2, Article number:487 Published 05 July 2012)

研究では、体長約1ミリ、寿命が約1カ月の線虫を2004年4月に打ち上げられたソユーズ宇宙船で国際宇宙ステーション(ISS)に運び込み、実験棟で育てました。

そして9日間の宇宙滞在後に地上へ持ち帰って調べたところ、老化に伴って蓄積するタンパク質の量が通常より少なくなっていることが明らかになりました。
また、神経の伝達や内分泌の働きに関わる11種類の遺伝子の働きも低下していることが分かりました。

そこで、通常の地上で飼育した線虫を用いて、このうちの7つ遺伝子を働かないようにしたところ、最大寿命が10~30日程度長くなることが明らかになりました。

以上の結果から、研究者らは、「宇宙での重力が低下した環境の下では、これらの遺伝子の働きが弱くなって、線虫の寿命が延びた可能性がある」としています。

これらの遺伝子はいずれもヒトに存在しており、DNA塩基配列も似ていることから、将来は人間の寿命を延ばすための有効な手段になるかもしれません。

また、粗食をすると寿命が延びることが知られていますが、これらの遺伝子との関連が注目されます。

ハセ博士=薬学博士。国立大薬学部や米国の州立大医学部などで研究や教官歴がある。

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