昆虫の作るアンチエイジング物質
「昆虫の作るアンチエイジング物質」
――ハセ博士のヘルシー情報最前線(393)
マメ科の植物に寄生する「サイカチマメゾウムシ」という昆虫から、強い抗酸化作用のある成分が見つかったというニュースです。
これは、広島大学大学院生物圏科学研究科の太田伸二教授らの研究グループが世界で初めて発見したもので、米国科学誌ジャーナル・オブ・ナチュラルプロダクツに発表されています。
(論文タイトル:Dorsamin-A’s, Glycerolipids Carrying a Dehydrophenylalanine Ester Moiety from the Seed-Eating Larvae of the Bruchid Beetle Bruchidius dorsalis/著者:Yayoi Hirose, Emi Ohta, Yasushi Kawai, and Shinji Ohta/科学誌名:J. Nat. Pro. February 19, 2013 DOI: 10.1021/np300713c)
サイカチマメゾウムシは体長約5ミリの小さい昆虫で、サイカチの木に卵を産み付け、生まれた幼虫はサイカチの種から栄養を補給して成長するのだそうです。
研究者らはこの昆虫の強い生命力と繁殖力に注目し、昆虫の体内でどのような物質が作られているかを調べました。
その結果、幼虫から強い抗酸化性を持つ「デヒドロアミノ酸」を構成成分に持つ新しい脂質「ドルサミンA」を見つける事が出来ました。
老化や細胞の損傷やがんを引き起こす活性酸素を分解する抗酸化物質には、ビタミンEやビタミンCなどが知られていますが、ドルサミンAはビタミンEなどよりさらに強い抗酸化力があることが分かりました。
将来はアンチエイジング成分として、化粧品などへの応用が期待されています。
さて、昆虫は古くから薬として使用されています。
特に漢方薬には多く使用されており、中国の生薬を集めた『本草綱目』には、多種の昆虫が記載されています。
例えば、シナゴキブリ(シャチュウ)には血行改善作用があることが知られています。
ゴキブリは大嫌いという人も多いと思いますが、先日ゴキブリの脳みそが治療薬なると、話題になりました。
イギリス・ノッティンガム大学の研究者らが、ゴキブリの脳内にはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)や大腸菌を殺傷する抗生物質があることを発表したものです。
ゴキブリなどの昆虫は非衛生的な環境で生きていくため、様々な細菌から身を守る必要があります。
そのため、生命活動に最も重要な脳内に抗生物質を分泌するのではないか、と考えられています。
我々人間が、ゴキブリなどの昆虫由来の新薬に助けられる日が来るのかもしれませんね。
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