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「収入が低い人は老化しやすい。」
――ハセ博士のヘルシー情報最前線(384)

収入の大きさと病気になりやすさとの間には因果関係がある、といわれています。例えば収入と肥満やメタボになりやすさは関係がありそうですよね。
そこで今回は、「収入が低い人は老化しやすい」ことが分かったという話題です。

この仮説でいわれている内容は次の通り。
身体が傷ついたりして炎症が起こった時や、ウイルスなどの感染症にかかった時に、C反応性タンパク質(C-reactive protein, CRP)というタンパク質が体内に多く出来ます。
また逆に、このタンパク質が多いと、何か体に異常が起こっていることを示しており、病気の診断の際の疾病マーカーとして用いられています。
ところが、低所得者の人にはこのCRP値の高い人が多く、これが心疾患をたかめ、また収入の低い人は老化スピードが高いといわれている原因の一つなのでは、ということです。

この研究は、南カルフォルニア大学のEileen Crimmins教授らがおこなったもので、医学専門誌のBrain, Behavior and Immunity誌に報告されています。
米国国立衛生研究所(NIH, National Institutes of Health)の資金の下におこなわれた「貧乏であることが、健康上のリスクを高めるか」を明確にするために実施された研究の一部です。

今までもCRPタンパク質は、心疾患を患った時にも増えることが知られていましたが、それ以外に患者さんの社会的地位にも関係しているらしいことが専門家の間でささやかれていたのだそうです。

そこで米国に住む人を対象に、CRPのレベルと収入の関係を調べました。

その結果、収入が低く貧民層とされるグループの成人ではCRPレベルが高い人の割合が高く、通常の収入の人ではCRP値の高い人が9.1%だったのに対し、貧民層では 15.7%と非常に高いことが分かりました。
また低所得者の多い少数民族や女性もCRP値が高い割合が多かったそうです。
そして、このCRP値の違いを見ることにより、収入の少ない人が何故老化が早いかを説明出来る、と結論されています。

また黒人やラテンアメリカ系の人、このグループに属する女性はCRPのレベルが特に高く、そのような人には肥満の人が多いことから、肥満がCRPを高くさせている最大の原因と考えられるそうです。

そして不健康な生活習慣を行うこと以上に、貧乏であることは病気になりやすくさせるリスク因子であり、その様な人の疾病の原因にはかなりの部分でCRPが関連しているとされています。

ハセ博士=薬学博士。国立大薬学部や米国の州立大医学部などで研究や教官歴がある。

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