味噌汁で糖尿病と肥満を抑制
「味噌汁で糖尿病と肥満を抑制」
――ハセ博士のヘルシー情報最前線(407)
味噌汁は日々欠かせませんが、塩分の取り過ぎで高血圧や脳卒中など、生活習慣病が心配です。
しかし、最近この味噌汁を1日3食飲むことにより、生活習慣病の代表格ともいえる糖尿病の発症予防に有効とする研究が報告されています。
これは山形大学医学部附属病院第三内科のグループが、大阪で開催された2014年度日本糖尿病学会年次学術総会で報告した内容です。
研究では、山形県高畠町の集団検診を受診した40歳以上の成人で、糖尿病治療中患者やデータ不十分の受診者を除外した男女合計1564人が調査対象としました。
そして、栄養調査や医療現場での食事指導などをおこなう場合に使用される簡易式自記式食事歴法質問票を使って過去1ヶ月間の食事内容を調査し、同時に血圧測定や採血をおこないました。
その結果、男性で味噌汁を1日3杯以上飲んでいる人たちは、味噌汁を1日2杯以内しか飲んでいない人たちに比べて、空腹時の血糖値平均が明らかに低くなっていることが分かりました。
この空腹時血糖値の正常範囲は70~109mg/dLで、126mg/dLを超えると糖尿病と診断されます。
今回の調査では 男性で味噌汁を1日3杯以上飲んでいる男性の空腹時血糖値は 93.3mg/dL であったのに対し、味噌汁を1日2杯以内しか飲んでいない男性の空腹時血糖値は96.1mg/dLでした。
わずか3mg/dL程度と思われるかもしれませんが、実は統計学的な検討を行うと有意の差であり、この結果は味噌汁を飲むと糖尿病を予防できる可能性が示唆しています。
その理由として、脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンと呼ばれるホルモン関係しているようです。
このホルモンには脂肪の燃焼や血糖値を低下させる働きがあるのですが、大豆に含まれるタンパク質にはこのアディポネクチンを増加させることが知られています。
したがって、味噌のような大豆由来食品の摂取がアディポネクチンを増やし、ひいては血糖値を低く保ち、糖尿病の発症を予防する効果があると考えられるというわけです。
今回の調査では、血中のアディポネクチン値も測定しており、味噌汁を1日3杯以上飲んでいる男性のほうが、1日2杯以内しか飲んでいない男性に比べて明らかに血中アディポネクチン値が高かったことも確認されています。
また、この効果は女性全体では認められませんでしたが、ボディマス指標(BMI)23未満で味噌汁を1日3杯以上飲んでいる女性は、血中のアディポネクチン値が高くなっていました。
さて、気になる味噌汁の塩分ですが、味噌汁を1日2杯以内の人たちと1日3杯以上の人たちで血圧の値に差はなかったということです。
以上の結果から、味噌汁を1日3回摂れば糖尿病の予防に有効、と考えられるとされています。
ハセ博士=薬学博士。国立大薬学部や米国の州立大医学部などで研究や教官歴がある。
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