寝だめは、不眠・抑うつ症を呼び寄せる
「春眠暁を覚えず」といいますが、私の場合は「秋眠暁を覚えず」です。
朝寒くなってくると、布団の中がとても気持ちよく感じます。そこで今日は、睡眠のお話です。
仕事が立て込んで、毎日夜遅くまで睡眠を削って残業をしたり、学生さんだったら試験前に睡眠を削って勉強します。
これが終わったら、いやになるほど寝るんだ…などと考えながら、がんばるのですが、そのような寝不足と寝だめを繰り返すと、不眠になったり、抑うつ症が出やすいそうです。
これは、久留米大精神神経学教室の内村先生のグループが、労働者を対象にして調べた結果明らかになったものです。
研究では昨年12月、首都圏の35~59歳の勤労者約9000人を対象にインターネットで実施、約6000人から得た回答をまとめたものです。
それによると、平均睡眠時間は平日6.1時間で、休日では7.3時間だったそうです。
ふつうは休日には遅く起きがちなのですが、平日どおりに起床する人(2時間以内)では不眠だと自覚する割合は25.9%だったのに対し、2~3時間長く寝ている人では29.4%、3時間以上になると33.3%の人が不眠症状を訴えていることがわかりました。
すなわち、寝だめをして平日より長く眠る人ほど不眠になる傾向が強かったそうです。
また、抑うつ症を経験した割合も、2時間未満では4.3%だったのに対し、2~3時間では5.2%、3時間以上長く眠る人では6.2%となっていました。
以上の結果から、休みの日に遅くまで寝ている人ほど不眠や抑うつを訴える割合が高く、普段の生活での寝不足を寝だめで補うことはできない、ことが示されました。
そして、“時間が不規則だと熟睡感が得られない。良い睡眠のためにはできるだけいつも同じ時間に起きることが重要”とのことです。
原因は体内時計が狂ってしまうためと考えられますが、神経質できちょうめん、完璧(かんぺき)症の人がそのリスクが高いようです。
特に中高年世代の場合では、体内時計が一度狂ってしまうと、もとにもどすのに時間がかかり、若いころと違って長時間眠っても日ごろの埋め合わせはできなくなるそうですので、ご注意を。
■よい睡眠をするための5カ条
(1)睡眠時間は人それぞれであり、8時間睡眠にはこだわらない。
(2)眠くなってから床に就く。就床時間にもこだわらない。
(3)起床時間は、毎日同じ時刻に。
(4)目が覚めたら日光を浴びて、体内時計を合わせる。
(5)眠りが浅いと思ったら、遅寝・早起き。
ハセ博士=薬学博士。国立大薬学部や米国の州立大医学部などで研究や教官歴がある。
この記事が気に入ったら「いいね!」しよう
最新記事をお届けします