アンチエイジングニュース

近年、認知症と歩行速度との関連が注目されてきています。
歩行活動に脳の多くの部分がかかわっていることから、認知症にも関係しているのだそうですが、歩行速度よりも歩幅がより重要のようです。

東京都健康長寿医療センター研究所の谷口優研究員らが、今年の2月に米国医学誌Journal of the American Medical Directors Association誌に、「歩行の状態が将来の認知症の発症リスクと関連する」という報告を行っています(Taniguchi Y, et al. J Am Med Dir Assoc. 2017;18:192.e13-192.e20. )。

研究は群馬県内で毎年実施されている住民の特定健診の受診者が対象としたもので、2002~14年に受診した高齢者のうち、認知症を発症していない1686人について、最大歩行速度などの変化と認知症の発症リスクとの関連を調べました。

ちなみにこの研究期間中に認知症を発症した人は、対象者の11.6%にあたる196人だったそうです。

次に、歩く速度が以前と同様の速さに保たれている群、やや遅くなった群、かなり遅くなった群に分けて調べたところ、以前と同様に保たれている群に比べてやや遅くなった群では1.53倍、かなり遅くなった群では2.05倍、認知症の発症リスクが高くなっていることがわかりました。

また、特に重要なのは「歩幅」なことが明らかになりました。

歩幅が狭くなっている人では、歩幅が広いままの人より認知症の発症リスクが、実に2.8倍も高くなる傾向にあったそうです。

以上の結果から、通常の加齢変化に比べ明らかに早く歩行機能が衰えた人では、その変化が見られた数年後に認知症を発症している例が多い、と結論されています。

ちなみに、歩幅が狭くなった群での変化率は、男性が70歳の時73.6、80歳で62.2、90歳が50.9で、女性ではそれぞれ63.8、53.4、43.0との事です。なお、横断歩道の白線は約45センチ幅だそうですので、横断歩道を渡るときに白線を踏まずにまたぐことができていたら合格のようです。

 

 

ハセ博士=薬学博士。国立大薬学部や米国の州立大医学部などで研究や教官歴がある。

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