アンチエイジングニュース

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シルエットからボディラインへ

ファッションの変遷を辿ると、古代から近代までの流れで「シルエット」と「ボディライン」ということを使い分けているということが言える。
シルエットというのは、服飾によって作られるものである。中世頃までは顔だけが存在を認められており、体は全部隠され輪郭はなくなり、服飾でシルエットを作っていた。腰はきゅっとして、スカートは開かれていてボディは全く見えなかった。
フランスの美学者の分析では、古代から中世までは人体では顔しか重要視されておらず、体は汚らわしいものと考えられていた。露出が許されていなかったため、体を隠してシルエットを作ったのである。それが15世紀、16世紀、そして19世紀となるに従ってボディラインを出すようになってきた。つまり、頭から下も存在が認められたのである。20世紀にもなると、衣服で作られていたシルエットの代わりに、むしろボディラインの方が強調されるようになってきたという。
その後、ファッションそして美意識はめまぐるしく変化していくことになる。

 

「隠す」→「露出」へ

「隠す」→「露出」へと辿ってみると、初めは顔だけが露出を許されていた。その顔にしても、お化粧などで隠されていた。今でも京都の芸者さんなどは顔を真っ白に塗って、素顔なんて全く分からなくしている。
しかし今ではスッピンでも許されるようになった。といっても素顔らしくお化粧するということに皆苦労しているようではあるが。
少し下に下がって、胸の露出。確かローマ時代には第5代皇帝ネロの奥さんが公の席で乳房を露出して皆の注意を引いたと「クォ・ヴァディス」に書かれているので、胸の露出の扱いについてはどう考えたらいいのか、検討の余地がある。
腹部を出すへそ出しルックは、ごく最近のファッションなので、パスして下肢にいたっては足、特にくるぶしは隠すものであった。
そして「膝は醜い」という考えがあったので、19世紀までことさら膝は隠していた。だから膝上にスカートが上がるというのは非常に勇気のある事だったと思うが、それがやがて20世紀後半のミニスカートの登場に繋がっていく。
ミニスカートの意義を改めて考えてみよう。
3章の「要望のメッセージ性」の時に気がついたように、女性の場合には子供っぽい顔の方が好まれる。さらに「小顔」というのがもてはやされる。ところが幼児の場合、ボディとのバランスでいったらむしろ「大顔」である。そうすると小顔と幼児性という矛盾したものを共存させる必要がある。八頭身でなおかつ幼児性を演出するのにミニスカートが有用になる。ミニスカートの出始めの頃、小学生に戻ったなどと悪口を言われる風潮にあった。まさしくその風潮こそが、幼児性を保ちながら小顔の印象を作るのに、ミニスカートが役立ったと言えるのではなかろうか。

 

水着の変遷

ところで水着の進化を見ていくと、ギリシャ・ローマ時代には、ドレスコードが今みたいにややこしくなかったので、着けたり着けなかったりということもあったようだ。
ビキニにおいても3世紀のシチリア島のモザイクに飾られており、何にも新しいものではない。
19世紀になると水着が復活する。これを着てサンタモニカの海で水泳ぎをしていたわけである。これぐらいの格好なら許された。同じ頃の日本の水着というのは今眺めると滑稽な感じがする。
そしてビキニが再登場する。戦後の50年代、60年代というのはセパレートの水着があらわれ、ビキニに進化して全盛となりました。それからついにはトップレスまで現れた。

そこで、またなぜ露出するかを考えた。露出してくれるのは男にとってはありがたいことではあるが。
例えばコルセットといえば明らかに束縛から物理的に解放した。心理的にも肉体的にも物理的解放という面が一つある。
これは一時ウーマンリブとも連動していて、ブラジャーはプレイボーイの男のために着けさせられたようなものだ。だからブラジャーから解放して、なおかつ露出する。実際にウーマンリブとどういう関係があるのか分からないが、デモなどの時に注意を引く為か、わざわざトップレスになることがあった。だから、自分の体を露出するということが女性の自己主張につながる、という見方もあるようだ。
事に気付き、下火になったようである。
こちらの立場からいうと挑発しているのかと言いたくなる。

 

>>>『WHY?Anti-Ageing』バックナンバーはこちら

Dr.SHIOYA2 塩谷 信幸(しおや・のぶゆき)
アンチエイジングネットワーク理事長、北里大学名誉教授、
ウィメンズヘルスクリニック東京名誉院長、創傷治癒センター理事長

現在、北里研究所病院美容医学センター、医療法人社団ウェルエイジングAACクリニック銀座において診療・研究に従事しているほか、日本形成外科学会名誉会員、日本美容外科学会名誉会員として形成外科、美容外科の発展に尽力するかたわら特定非営利活動法人 アンチエイジングネットワーク理事長、日本抗加齢医学会顧問としてアンチエイジングの啓蒙活動を行っている。

【著書】
一年で一歳若返る/アンチエイジングのすすめ(幻冬舎)
美容外科の真実/メスで心は癒せるか?(講談社)
40代からの/頭と体を若返らせる/33の知恵(三笠書房)
「お若いですね」と言わせよう。(ゴルフダイジェスト)
など
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